ロンドン旅行記#11<四日目その2・帝国戦争博物館篇>

地下鉄に乗ってランベス・ノース駅に移動。お昼に通りにあったパブに入って、まだ食べてなかった本場のフィッシュ&チップスいただく。ビールに合うし最高!


そんなこんなでたどり着いたのが帝国戦争博物館。実は当初、この博物館は2時間ほど見学して次の目的地に進む予定だったのですが、実際に行ってみたら余りの面白さに18時の閉館まで4時間以上滞在したのでした。


↓緑がいっぱいの広場の中にあります 巨大な大砲が目印

f:id:doy:20210806172713p:plain

 


例によって入場料は無料。ありがたい事です。入り口入ってすぐに目の前に飛び込んでくるのが吹き抜けに吊られたたくさんの戦闘機!他にも戦車やV2ロケット等あちらこちらにたくさん展示されています。凄い迫力!

 

f:id:doy:20210806172738p:plain

 


まずは「第一次世界大戦」コーナーから見学始めましたが、とにかく見せ方が上手い。最新のテクノロジーインタラクティブな映像展示が多く、英語が読めなくても見応えがあって楽しめました。戦争に関する展示というと、良くも悪くも「重く暗いイメージ」があるけれど、(一部の展示を除いて)あまりそういうのは感じませんでした。


続いて「第二次世界大戦」コーナーへ。ここではナチスドイツや日本軍も展示に登場し、さらに興味深い内容になってきます。

 

f:id:doy:20210806172808p:plain

 

 


↓おなじみのナチスの国章

f:id:doy:20210806172832p:plain

 


↓ボロボロの零戦に日本国旗

f:id:doy:20210806172856p:plain



続いて「SECRET WAR」と題された「MI5やMI6のスパイによる情報戦」に関するコーナーに突入。映画化もされた超リアルなスパイ小説『ティンカー、テイラー、ソルジャー、スパイ』(映画の邦題は『裏切りのサーカス』)が大好きな嫁さんが説明を食い入るように見て興奮してましたw。


↓超小型カメラ等スパイグッズ諸々 もちろん本物

f:id:doy:20210806172914p:plain

 

ティンカー、テイラー、ソルジャー、スパイ〔新訳版〕 (ハヤカワ文庫NV)

ティンカー、テイラー、ソルジャー、スパイ〔新訳版〕 (ハヤカワ文庫NV)

 

 


カンバーバッチさん主演『イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密』にも登場する暗号機エニグマも展示されていました。タブレット上でエニグマの仕組みをシミュレーションできる装置もあって楽しめました。

 

f:id:doy:20210806172936p:plain


 

 


ここまでの展示で既に脳みそパンクしそうなくらいの情報量だったのですが、最後にどうしても見ておきたかった「ホロコースト」展示コーナーへと進みました。ここまでは写真撮影自由でしたが、ここだけは禁止。入場時、黒人の係員が娘に対して「とても刺激が強い展示だけど大丈夫?」と聞いてきました。「No Problem!」と答えていざ、入場。


係員の言葉通り、展示内容はとてもヘビーでした。大量の写真や犠牲者の遺品(子供のオモチャもあった)に加え、精巧に作られたアウシュビッツ収容所の巨大なミニチュア模型に圧倒されました。娘にはこれまでも『縞模様のパジャマの少年』や『ライフ・イズ・ビューティフル』といった映画は観せていましたが、それでもかなりショックだったようです。見終わった後には家族全員が外のベンチに座ってしばらくは何もできずぐったりしてました。


↓博物館のガイドブックとホロコースト展示に関するガイドブック購入

f:id:doy:20210806173004p:plain

 


このように当初の期待を上回る博物館で大満足だったわけですが、実はこの博物館には他にも面白い逸話があるのです。


bedlam」という英単語があります。ネットで意味を調べると、

bedlam【名】
不穏な騒ぎ、混乱、気違いざた〔差別語〕、騒々しい混乱の場所
精神科病院◆【語源】15世紀にロンドンに存在した精神科病院のthe Bethlehemより◆古語で侮辱的に使われることがある

 

と、出てきます。ロンドンに実在した世界最古の精神科病院「王立ベスレム病院」が語源となっているのですが、ここは実際には「病院」と呼べる施設ではありませんでした。不衛生で劣悪な環境下において、暴力的な患者は鎖で何年も繋がれ、人間として扱うことはなかったと言われてます。よくホラー映画で昔の精神科病院で恐ろしい人体実験が…みたいなストーリーがあったりしますが、まさにそのオリジナルがこの病院だったのです。


それだけでなく、この施設は貴族等見物客から入場料を取って、患者を見世物にしていました。見物客は患者を棒でつつく等やりたい放題だったと言われてます。


↓1735年に描かれたベスレム病院の絵 貴族が優雅に患者を見物している

f:id:doy:20150906003636j:plain

 

※追記(2017/6)

中野京子「怖い絵2」にこの絵の解説が載ってました。作者はウィリアム・ホガースで八枚組『放蕩児一代記』の最終場面だそうです。坊主頭の青年は莫大な遺産を受け継ぎながらも遊びやギャンブルで破産し、自殺未遂の挙句この病院に入れられたという設定の模様。



しかし1814年に様々な悪行が世に知れ、病院長やスタッフは解雇されました。これを機に1815年に病院も移転し、そこからさらに1930年にロンドン郊外へと再度移転しました。そしてその跡地に1936年からオープンしたのが、この帝国戦争博物館なのです。「ホロコースト」の展示だけでなく、「人間って一体…」と考えさせられる場所なのでした。


↓1896年のベスレム病院 一番上の写真と比べてみよう

f:id:doy:20150906003830g:plain

 

↓この病院を舞台にした1946年の映画がフランケンシュタインでおなじみのボリス・カーロフ主演の『恐怖の精神病院』(そのまま!)です

恐怖の精神病院 [DVD]

恐怖の精神病院 [DVD]

 

 ↓原題は『BEDLAM』(こっちもそのまま)

f:id:doy:20150906011321j:plain

 

↓最近は同名のTVドラマまであるらしい huluで見れます



そんなわけでぐったりしたまま宿に帰宅。夕飯は近所のインド料理屋でカレーをいただきました。

 

↓壁のイラストがカワイイ 「SUMO」とかあるのが気になるw

f:id:doy:20210806173032p:plain

 

 

帝国戦争博物館内部の映像


The Imperial War Museum London Tour - YouTube



#12に続く