SPUN

改めて映画「SPUN」(オフィシャル)感想。いつものようにドラッグを買いに来た青年が、色んな出来事に巻き込まれる不眠不休の3日間をノンストップで描いた青春ラリラリ映画。出てくる人間は全員ホワイト・トラッシュで、平たく言うと人間のクズ。だけど、「自分は中毒じゃない、いつでもやめられる」とまるで自分自身が分かっていないダメ人間達。主人公の青年も一見気が小さいやさ男なのに、ドラッグ決めている時はメチャクチャで、ストリッパーの女の子を自宅のベッドに縛り付けたまま、ミッキーローク扮する麻薬の売人"コック"に電話で呼び出されて「すぐに戻る」と言い残しそのまんま数日間外出。しかも、「オレのお気に入りのCDかけといてやるよ」と言ってKISSのCDを大音量でかけるが、音飛びしていて延々リピート。こんなの聴き続けたら死ぬよ。つか、そんな暇あるんなら離してやれよ。
監督のジョナス・アカーランドはプロディジー「SMACK MY BITCH UP」(MUSIC-VIDEODROME)やマドンナ「RAY OF LIGHT」のPVを監督した人で、それらのPVの映像ギミックをまんま102分延々やってます。見終わったあとあまりの情報量の多さに脳がパンクすること間違いなし。フツーPV監督出身者が映画でPVっぽい短いカット割りすると、「それ見たことか」と徹底的に避難されたりしますが、あえて全編にその効果を出すことで従来の映画とはまた違ったグルーヴを生み出してはいます(好き嫌いは別れそうですが)。アルバム1枚ヘビメタもしくはドラムンベースが続くような映画といえばわかりやすいかも(監督は以前スウェーデンでヘビメタバンドをやっていた)。
ただし、スマッシング・パンプキンズのPV「TRY,TRY,TRY」(MUSIC-VIDEODROME)では、ジャンキー・カップルの悲惨な末路を描くことでドラッグに対してアンチな姿勢を表現してはいましたが、同じドラッグを扱ってはいても今作ではせいぜい逮捕されたり、彼女にふられたり、××を銃で撃たれたり(痛い!)するくらいで、極端な悲劇は訪れません。だもんでドラッグに対する監督の意見のようなものは正直よく分かりませんでした。
つーか、ジョン・ウォーターズのような「ホワイト・トラッシュに対する愛情」といったものを、アカーランドはそもそも持ち合わせていなくて、「スウェーデン人(よそ者)から見たアメリカ」という世界を、見たまんま描いたらこうなったってだけなのかもしれません(これまでのPVもしかり)。悲惨に見える人には悲惨に見えるし、かっこよく見える人にはかっこよく見える、それだけ。傑作とは言えないし、R-18だし、下品だしで万人には勧められませんが、ビリー・コーガンの音楽もいいし、復活ミッキー・ロークは最高だし、監督のPVが好きな人には基本的にオススメ。渋谷の映画館ではオサレなコラボアイテムも販売しています。