感情の3D映画 - 『息もできない』
母と妹の死の原因を作った父親に対して強い憎しみを持っている借金取りのサンフン(ヤン・イクチュン)は、ある日、女子高生のヨニ(キム・コッピ)と知り合う。サンフンは、強権的な父親や暴力的な弟との関係に悩むヨニに惹(ひ)かれ、それぞれの境遇から逃避するかのように何度も一緒に過ごすうちに、互いの心に変化が訪れる。
渋谷に『息もできない』を観に行きました。最後は涙と鼻水で本当に息ができなくなりました。
邦画とハリウッド映画を同じ土壌で比較するというのは予算その他の規模が違いすぎるので無理があるけど、お隣韓国映画と比べることは可能だと思う。言い換えれば、韓国で作れる映画というのは日本でも作れるはずだし、逆もまたあり。
今回『息もできない』を観て思ったのは、作品の出来ウンヌンというよりも、なぜこれが日本で作れないのか?という思いでした。詳しくは知らないけど低予算なことは間違いないし、もちろん有名な役者も出ていない。『アバター』を作ることは無理でも、日本でもこういう映画なら作れるはずだ。はっきり言って悔しい。
作品全体に漂ういかがわしい雰囲気は70年代の劇画を見てるよう。そんな世の中で感情を暴力でしか表現できない孤独な青年の物語。そんな劇画的世界に世間に媚びない女子高生や携帯電話といった一見相容れない要素をうまく絡めてるのが憎い。
そして何よりもスクリーンを突き破って観客の心に突き刺してくる登場人物たちの怒り、悲しみ、喜びという原始的な感情の塊。それはまるでメガネなしで飛び出してくる感情の3D映画。
先日発表されて30代以上の男性ほとんどが「あちゃー」と思った『あしたのジョー』の実写映画化。奇跡でも起きない限り、駄作になる可能性が高い。いっそヤン・イクチュン監督(及び製作、脚本、編集、主演!)にまかせてみてはどうか?彼なら絶っ対に傑作にしてくれるはずだ。オススメ。