パンズ・ラビリンス


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1944年のスペイン内戦で父を亡くし、独裁主義の恐ろしい大尉と再婚してしまった母と暮らすオフェリア(イバナ・バケロ)は、この恐ろしい義父から逃れたいと願うばかり自分の中に新しい世界を創り出す。オフェリアが屋敷の近くに不思議な迷宮を見つけ出して足を踏み入れると、迷宮の守護神が現われ彼女に危険な試練を与える。

川崎で観て来ました。
少し前にDVDで見た「デビルズ・バックボーン」が良かったのと、町山さんのPodcast(第14回「PAN'S LABYRINTH」)で聞いて面白そうだったので期待はしてましたが、期待以上の出来でした。

少女オフェリアの住む世界は、少女でなくとも空想の世界に逃げ出したくなるくらい辛い現実に支配されていて、映画の半分はこの辛い現実世界をこれでもか!と観客に見せつけます。ポスターの印象から「可憐な少女がファンタジーの世界に紛れ込み王子様と出会って...」なんて映画を想像していた人は映画中盤で耐え切れなくなって逃げ出す事必至。それらを認識し覚悟していた人ですら、私みたいに「スプラッター映画を見過ぎて不感症になってる」人以外(つまりほとんどの人)はやっぱり逃げ出したくなるハズ(「ア・ホーマンス」の東八郎思い出しちゃったよ)。その位精神的にも肉体的にも辛い世界が執拗に描かれてます。

では少女が見つけたファンタジー世界はどうかというとこちらもかなりキツイ。「あなたはお姫様の生まれ変わりだ」とか都合のいい事を言う牧神「パン」はルックスも恐いし言ってることも信用できるかどうか怪しいし、「試練」と言われ巨大カエル(&巨大ダンゴ虫)や、手の平に目玉がついた化け物(子供を喰うらしい)と対決したりと、現実に負けないくらい大変な目に。ダリオ・アルジェント監督作品並みに「美少女がひどい目に会う」映像がこれでもかと続くのでそういうのがお好きな方にはオススメ。しかし台本を理解した上でこの役を引き受けたのだとしたらこの娘はかなりの大物だよなー。

良かれと思って取った行動が原因で結果的に相手を苦しめることになるケースが多いのもこの映画の特長。母親は「少女の安全の為に」大尉と再婚したのだろうし、娘は熱が下がらない母の為にある事を行おうとするし、医者は薬を渡すし、ゲリラは食料庫を襲う。完璧な悪役でもある大尉でさえも「自分の息子」の為には何でもしようとする。しかし現実はかくも厳しく悲劇は起きるべくして起きる。

そんな不幸のドン詰まりから「最後のチャンス」に対する少女の行動とその結果に涙ダダ漏れ。安易なお涙頂戴映画とは一線を画す傑作。映像も音響も素晴らしいのでレンタルを待たず映画館での鑑賞をオススメ。

尚、川崎チネチッタでは10/27にギレルモ・デル・トロ監督作品(「デビルズ・バックボーン」「ブレイド2」「ヘルボーイ」)のオールナイト上映も企画されています。詳しくはこちら

デビルズ・バックボーン スペシャル・エディション [DVD]

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