劇映画はドキュメンタリーを超えられるのか?-『ハート・ロッカー』
『ハートロッカー』あらすじ。都市開発の名の元に住処を奪われたドヤ街の人達。彼らを救うために立ち上がったTUBE、ハウンド・ドッグ、虎舞竜の面々。熱いハートを持ったロックン・ローラーと悪の手先シンタローによる長き戦いの火ぶたが切って落とされた。
嘘です。
2004年夏、イラク・バグダッド郊外。アメリカ軍爆発物処理班・ブラボー中隊のリーダーに、ウィリアム・ジェームズ二等軍曹(ジェレミー・レナー)が就任する。まるで死への恐怖などないかのように遂行されるジェームズの爆発物処理の様子に、仲間のサンボーン軍曹(アンソニー・マッキー)らは不安を抱くようになり……。
『ハート・ロッカー』を初日に観て来ました。アカデミー賞効果のせいか、劇場はほぼ満席。
ほとんどがブレブレの手持ちカメラで撮影されていて、かつ分かりやすいドラマがあるわけではないのでドキュメンタリー映像にしか見えない。冒頭から始まる爆弾処理を初め、映画は常にギリギリの緊張感を維持したまま続いて行くので非常に心臓に悪い。監督の「戦場での死」に対するアプローチは極めてドライで、かつ骨太。これを女性が監督したという事実にまずは驚く。
「死」の描き方に関して「ドライ」と書いたけど、それは監督のアプローチであって、登場人物は常に「死」に怯えている。中でも技術兵のエルドリッチは精神的にも追いつめられていて「次は自分の番ではないか?」という考えが頭から離れない。しかしそれは彼がまともであることを意味する。
そんな中で主役であるジェームズだけは自らの危険を顧みず、むしろ進んで爆弾処理の現場へと進んでいく。冒頭に「戦争は麻薬だ」というテロップが出ることから、ジェームズが「危険な状況でないと、生を実感できない」人物であることが示唆されるので、当初は彼は「死」に対する感覚が麻痺してるロボットのような存在に思える。しかし実際にはそんなに単純ではなくむしろ逆だったりするのがこの映画の面白いところ。
とはいえ、冒頭にも書いたように安易なドラマはここでは起きず、緊張感は持続するものの、カタルシスを感じることはない。超リアルでドキュメンタリーにしか見えない戦争映画、といえば聞こえはいいし実際面白かったけど、「それならドキュメンタリーでも良くね?」と思ってしまったのも事実。もう少し劇映画としての面白さが欲しいというとわがままですかね?爆発直後に砂がぼわっと舞うシーンの美しさや、銃撃戦の音響の素晴らしさ等見所は多いので基本的にはオススメ。
ここまで書いたところで、キャスリン・ビグロー監督がアカデミー賞監督賞、作品賞(その他もろもろ)を穫ったニュースが。それでも私にとって彼女はNew Order『Touched By The Hand Of God』PV(メンバーがLAメタルの格好でパフォーマンスするバカPV)の監督だったりします。このPVでも冒頭に爆発シーンがあるなー。爆発大好きなのか?