先生、涙ってのはどうやって止めるんだ?-「パコと魔法の絵本」
昔々、大人の俳優に脱皮できなかった元有名子役や、消防車にひかれたまぬけな消防士など、患者だけでなく医者や看護師も変わり者ばかりが集まる病院があった。中でも一代で自分の会社を築いた超ワガママ老人の大貫(役所広司)は、一番の嫌われ者。ある日大貫は、1日しか記憶を保てない少女パコ(アヤカ・ウィルソン)に出会う。
初日に娘と2人で観に行きました。
私は涙腺のユルさには自信があってかなりしょうもないことで泣いたりする男なので、あまり真に受けられると困るのですが、
「泣き殺される」かと思ったよ!!!
映画中盤から後半にかけてはもうずっと泣いてた。それだけでなく、どうもアヤカ・ウィルソンちゃんの声はオレの涙腺を刺激する周波数を発してるようで、前半の登場シーンからもう泣きっぱなし。オレじゃねーよ、アヤカが悪いんだよ!我ながら頭おかしいと思う。
原作になった舞台のタイトルは「MIDSUMMER CAROL ガマ王子vsザリガニ魔人」。つまり「クリスマス・キャロル」のように性悪男が改心して善人になるシンプル過ぎるくらいシンプルなお話。そんな「いい話」に対する照れ隠しのように笑えるシーンやギャグが終始散りばめられてはいるんだけど、正直言ってあまり笑えなかった。これはもう好き嫌いの問題になっちゃうけど、あまりにも日本ローカルネタに頼り過ぎてて不満だった。コンセプトがしっかりしていて世界のドコに持っていっても恥ずかしくない出来だからこそ言うが、「ジュディ・オング」とか「彦摩呂」で笑わせるんじゃなくて、もっと普遍的なネタにして欲しかった(「ピーターパン」とか「フック船長」とかさ)。また後半の「絵本を元にした劇」のカラフルなシーンを際立たせる為に、それ以外では色数とか押さえた方が良かったんじゃないの?とも思えた。
という風に不満はいくつもあるんだけど、それらをぶっとばす勢いで楽しめた。劇を見るパコが感情移入するに従って演じる人間が絵本の登場人物に見えてきて、自分自身もその世界に飛び込んでいくシークエンスは素晴らしいの一言。実写と絡めたCGはかなり大変だったそうだが見事に実を結んだと思う。
中島監督はかなり独特の映像を作る人なので、さぞかし自身の作家性とかスタイルを重んじてるのかと思っていたら「Cut」のインタビューで、
基本はね、作家性を出そうなんて思ったことは微塵もないわけですよ。面白いほうがいいって思ってるだけなんです。
(中略)
やっぱり自分はサービス業だと思っていて、お客さんが『面白かった』って言ってくれるのが何より嬉しいんですよ。『独特でしたね』とか、『中島ワールドですね』って言われても、1ミリも嬉しくないんですよね(笑)。
と語っていた。かなり意外だけど、そういう意味では井口昇監督の「過剰なサービス精神」に通じるモノがあると思った。
他に良かったのは土屋アンナかな。ああいう演技させると本当にハマるというか、ちょっとズルイと思った。パコの話だけでも涙腺ガバガバなのに、お前もかっ!って。
それでも、「性悪男を善人に改心させる」話に説得力を持たせられるのはやっぱパコだけなんだよねー。パコに魅力がないとこのお話そのものが成り立たなくなっちゃう。あれだけたくさんの役者がいる中であの求心力は凄い。もうおじさんメロメロですよ。
人によっては「お涙頂戴映画ね」で片付けるのかもしれないけど、私は不満もありつつ面白かったし大いに心を動かされ、大いに泣かされました。
先生、涙ってのはどうやって止めるんだ?
簡単です。いっぱい泣けば止まります。
うわあああああああ(泣)。
その他
・木村カエラの主題歌「memories」は我が家では「ポニョ」に代わってヘビロテ中です。
・映画館のあちこちからすすり泣きが聞こえる中、ウチのバカ娘が空気読まずにポップコーンをバリバリ食ってすいませんでした。
・そのバカ娘に上映終了後「何が面白かった?」って聞いたら「オカマが歌(ジュディ・オング)歌うトコ」だって。よりによってソレかよ!
マスタッシュ/memories(original version)
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