エレファント

久しぶりにK君と映画。「キルビル2」とどっちにするか悩んで結局「エレファント」(オフィシャル)を観る。これがもう大傑作!コロンバイン高校の事件を題材にしていることから当然「ボウリング・フォー・コロンバイン」と比較されるのですが、色んな意味で対極にある作品。マイケル・ムーアがこの事件の原因の1つとして「銃」にポイントをしぼって行動を起こすのに対して、この映画は恐ろしいくらい何も語りません。原因の追及もしないし、何かへの批判もしない。今後の進むべき道についても語らないし、そもそもこれだけスキャンダラスな事件にも関わらず、映画自体にクライマックスとよべるシーンすらありません。
カメラはあの日あの時あの場所にいた複数の生徒達の「背中」を延々と映していく。まるでそれ以上の詮索を許さないかのように。監督はインタビューでなぜこのような事件が起きたのか「自分にも誰にも分からない」とはっきり答えています。この事件の原因を「映画の影響」や「銃の手に入りやすさ」や「いじめ」などに絞って、その推測だけを大前提にして声を大にしたところで、何も分からないし、何も変わらない。ちなみに「エレファント」というタイトルは「盲目の男達が象の耳や足などの一部分だけを触ってそれらの正体を探ろうとしても決して全体像は掴めない」という諺から来ているそうです。
ところで映画秘宝から出ている「実録殺人映画ロードマップ」(amazon.co.jp)の高橋ヨシキさんによる「エレファント」の考察と、実際のコロンバイン事件についての文章が素晴らし過ぎるのでオススメ。これパンフレットに載っけて欲しかった。