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ライカスタジオ新作『THE BOXTROLLS』を観ました


コララインとボタンの魔女』、『パラノーマン ブライス・ホローの謎』といった傑作ストップモーション・アニメを製作しているライカスタジオの新作『THE BOXTROLLS』を輸入盤Blu-ray英語字幕で鑑賞しました。(例によって)日本公開は現時点で未定ですが、アカデミー賞アニー賞の長編アニメーション部門でもノミネートされていて、ライカスタジオならではの深みのあるダーク・ファンタジー作品でしたので「日本公開熱烈希望」の意味を込めてレビューしたいと思います。


原作はイギリス人Alan Snowによる児童文学『Here Be Monsters!』で、翻訳版は出ていません。監督はGraham AnnableとAnthony Stacchiの二人で両者ともに長編映画の監督は初めてのようです。映画のタイトルである「ボックストロール」とは日本で言う妖怪のようなもので、箱を洋服代わりとした風貌をしています。


↓こちらが原作本


↓ボックストロール達


ライカスタジオ作品ゆえにストップモーション・アニメとしての面白さや素晴らしさは間違いありません。が、キリがないのでここではメイキング映像がメインの予告編を紹介するにとどめておきます。



映画の舞台となるのはチーズブリッジというチーズで有名な町。この町にはボックストロールが夜な夜な出没しては子供を連れ去って食べてしまうと信じられていました。そこでボックストロールを捕まえる為に登場したのがスナッチャー(「かっぱらい」や「誘拐者」の意味)という害虫駆除業者(Exterminator)で、彼は町の権力者であるポートリー・リンドに対し、全てのボックストロールを処分したら、権力者の象徴である「白い帽子」と同じく権力者の象徴である「チーズの試食会への参加権」をくれるよう要求します。


↓赤い帽子が目印のスナッチャー


このスナッチャーと対峙する事になるのが、訳あって赤ん坊の頃からボックストロールと暮らし、自身をボックストールと思い込んでる少年エッグスと、ポートリー・リンドの娘ウィニー(声優はエル・ファニング!)。果たしてボックストールやエッグスの運命はいかに?というのが大まかなストーリーです。


↓エッグス(洋服代わりの箱に「EGGS」と描いてあったのでそう呼ばれている)


エル・ファニングウィニー



以下、かなり映画の内容に触れていますので、ネタバレ気になる方は読まないでください。









本作の主人公はエッグスになりますが、ストーリー展開の軸となるのは「権力」という魔物に取り憑かれた男スナッチャーです。実は彼は重度のチーズ・アレルギーなのでチーズを食べることはできません。それにも関わらず「チーズの試食会に参加」する為に手段を選ばず突き進もうとします。全ては「権力」を手にいれる為です。


そんなスナッチャーが考えたのが、ボックストロールという「悪者(モンスター)」を「生み出し」、彼らを「排除」する事で「民衆を味方につける」という作戦なのでした。つまりボックストロールとはナチス政権におけるユダヤ人と同じ存在といえます(もしくは現在の日本でも言い換えは可能です)。そして民衆はありもしないデマ(恐怖)に怯え、怒り、その恐怖を取り除いてくれる者を信頼し、いとも容易く洗脳されてしまいます。


原作者がイギリス人と書きましたが、本作の世界観は極めてイギリス的な「明確な階級社会」がベースとなっています。生まれが貧しくても努力して働くことで夢を実現できるという古き良きアメリカン・ドリーム的な希望のない世界にスナッチャー達は生きています。そのような世界から生まれるべくして生まれたのがスナッチャーのような「モンスター」であり、これは極端な格差社会となっているアメリカや日本においても他人事とは言えないでしょう。


そんなイギリス的映画ゆえか不明ですが、本作はサイモン・ペッグニック・フロストのコンビが声優として参加しています。ニック・フロストスナッチャーの部下の一人で、サイモン・ペッグは後半登場するある重要人物の役です。また、モンティ・パイソンエリック・アイドルが「The Boxtrolls Song」という曲を書き下ろしているのもポイントです。


↓The Boxtrolls Song


声優といえば、ある意味主役であるスナッチャーを演じているのはベン・キングズレー。彼は『シンドラーのリスト』において、シンドラーと共にユダヤ人を救った会計士のイツァーク・シュテルンを演じていましたが、本作では真逆と言える役を演じているのもちょっと面白いです。


『コラライン〜』や『パラノーマン〜』でもラストシーンはあっと驚く仕掛けがありましたが、本作でも用意されているのでこちらもお楽しみに。


思いつくままに色々書きましたが、現代の日本における問題を描いた作品でもあるので、改めて日本での公開を希望します!ちなみにライカスタジオの次回作は古代日本が舞台の『Kobo and the Two Strings』だそうなのでこちらも楽しみ。オススメ!


『THE BOXTROLLS』オフィシャル


過去のエントリ
『コラライン』公開を前に

I HATE HATE - 『パラノーマン ブライス・ホローの謎』


↓ハードカバーのメイキング本 安価なKindle版もあります
The Art of The Boxtrolls

The Art of The Boxtrolls

Here be Monsters

Here be Monsters