I HATE HATE - 『パラノーマン ブライス・ホローの謎』
六本木で『パラノーマン ブライス・ホローの謎』3D字幕版を観ました。まごうことなき傑作!
<その1 魔法のようなストップモーション映像がスゴイ>
本作は私が大大大好きな『コララインとボタンの魔女』を作ったLAIKA社の待望の新作ですが、『コラライン〜』と比べてもさらにストップモーション技術が進化していて度肝を抜かれました。キャラクターの表情が豊かで動きが滑らかなのは言わずもがな、従来のストップモーションアニメでは考えられないレベルのアクション(ゾンビとのカーチェイスや大勢のキャラクターによるモブシーン)が次から次へと繰り広げられ唖然としました。
また『コラライン〜』でもそうでしたが、ストップモーションアニメと3D映像はとても相性が良いので、「3Dはちょっと...」という方にもぜひオススメしたいです。ちなみに音声は字幕版のみとなっています(変な子役の吹替えとかなくて本当に良かった...)。
※メイキング映像についてはこちら参照。
<その2 80年代ホラー愛がスゴイ>
主人公のノーマンは家でも学校でも変わり者(Freak)扱いされ居場所がありません。そんな彼の唯一の楽しみがホラー映画鑑賞であり、彼の部屋はホラー映画のポスターやグッズでいっぱいです(ケータイの着信音は『ハロウィン』のテーマ!)。彼にとっては死者やモンスターの方が友人であり心の拠り所であり、いじめっ子や大人こそが恐怖の対象なのです。この設定を聞いただけでも私はボロボロ泣けてきます。
「現実世界に居場所がない子どもがモンスターといった異形の者にシンパシーを抱く」というのはティム・バートンの十八番であり本作もその流れを汲んだ作品と言えますが、同じくストップモーションアニメであった『フランケンウィニー』と比べると、コメディ要素はあるもののよりシビアでディープな内容でした。
クリス・バトラー監督は本作について次のように語っています。
僕はもともと子どものためのゾンビ映画を作ろうと思っていたんだ。小さい頃に観た『グーニーズ』や『ゴーストバスターズ』『E.T.』……、それにホラー映画が大好きだった。
「お前はオレか!」と言いたくなるクリス監督。この言葉通り、本作には80年代の映画の影響が色濃く反映されています。『死霊のはらわた』や『バタリアン』のようにコミカルな部分がありつつも、恐ろしいホラー映画でもあり、『グーニーズ』のような子どもによる冒険活劇の要素もしっかり入ってます。つまり私のようなホラー好きのおっさんにも、子どもにも楽しめる映画ということです。これって最高ですよね!
<その3 ストーリーが深くてスゴイ>
もう上記の2つだけでも十分面白いんですが、それらに加えてストーリーも素晴らしいです。クリス監督は「この映画のテーマの一つは、『見かけで中身を判断するな』ということだ」と語っていて、本作では主人公のノーマンを筆頭にいわれなき差別を受ける人が複数名登場します。そして当然差別する人(集団)も登場しますが、彼らはその行為を「正しい」と無根拠に信じています。しかし因果は巡り、ある出来事で逆に差別される側になってしまうのでした。
本作を観て、昨今日本でもよく聞かれるようになった「ヘイト・スピーチ」に関するニュースのことを思い出しました。何も悪い事をしていない個人に対して、何の根拠もなく集団で罵声を浴びせる行為の卑劣さと愚かさ。そして差別を受けた者の悲しみと激しい怒りが、この映画を観れば子どもにだって理解できると思います。この映画を通じていじめや差別について子どもと話し合うのも良いんじゃないでしょうか?ラストの展開は号泣必至ですよ!超超超オススメ!
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