人は皆不完全 - 『メアリー&マックス』

メルボルンに暮らす8歳の少女メアリーは、ある日アメリカに住む誰かに手紙を送ろうと思い立ち、電話帳から選び出した人物に手紙を書き始める。そしてニューヨーク、人付き合いが苦手で一人孤独な日々を送っていた中年男マックスのもとに、オーストラリアから一通の手紙が届く。それを機に、メアリーとマックスの2つの大陸をまたいだ20年以上にわたる交流がスタートする。


オフィシャルサイト


前回の監督の話(『メアリー&マックス』アダム・エリオット監督について)に続いて、今回は『メアリー&マックス』本編について。


過去作が全て障害を持つ特定の人物を描いたものだったのに対して、今作は初の長編ということもあってか、「メアリー」と「マックス」という2人の話になっています。


額のアザにコンプレックスを持ち、家庭環境にも恵まれていない少女メアリー。彼女が気まぐれに出した手紙を受け取ったのが、アスペルガー症候群wiki)で過食症の中年男性マックス。孤独で本当の友人が欲しかった2人は文通することで、次第に心を通じ合わせていきます。


8歳の少女らしく素朴な疑問をざっくりと思うがままに書くメアリー。それに独特の文体とユーモアで丁寧に誠実に答えるマックス。彼らのやり取りはとてもユニークで微笑ましいです。


しかしメアリーの不用意な一言が原因で彼らの関係はあっさりと壊れてしまいます。私はメアリーを自分のことのように思って観ていたので、彼女が絶望する場面はとても辛かったです。


私はこの映画に「コミュニケーションの難しさ、そして希望」というテーマを感じました。メアリーの書く何気ない一言は、マックスにとっては宝物にもなるし爆弾にもなってしまいます。それはアスペルガー症候群という病気のせいといえなくもないのですが、同じようにメアリー自身もマックスからの手紙を読んで喜んだり傷ついたりします。程度の差こそあれ、誰でも同じことがあるのです。


終盤、マックスは言います。「人は皆不完全で欠陥を持ってる。その欠陥は選ぶことができない。でも...」


ドン底まで堕ちてしまった2人が最後にどうなるのか?そこから何が生まれるのか?非常に重いテーマでありきたりなハッピーエンドではありませんが、私はとても幸せな気分になれました。多くの人に観て欲しい映画です。


(その他)
・アダム・エリオット監督は実際にNYのペンフレンドがいて20年以上文通している。つまりメアリーは監督自身の投影でもある。
・マックスの声を担当してるのはフィリップ・シーモア・ホフマン
・パンフレットは¥1,000もするけど、ハードカバーで中にはあっと驚く仕掛けもあってとても良かった。買って損無し!