ウーマン・リブじゃない!女のリビドーだ! - 『ランナウェイズ』

1975年、ロサンゼルスで暮らす15歳のジョーン(クリステン・スチュワート)の夢はロックスターになること。ロックは男のものと相場が決まっていた時代、彼女は周りから変人扱いされていた。だが、音楽プロデューサーのキム(マイケル・シャノン)との出会いがジョーンの運命を大きく変え、彼女は10代の女の子だけのバンドを結成する。


オフィシャルサイト

Hello daddy Hello mum
I'm a ch-ch-ch-ch-ch-ch
Cherry Bomb
Hello world
I'm the wildest girl
I'm a ch-ch-ch-ch-ch-ch
Cherry Bomb


フローリア・シジスモンディ監督の話(こちら)に続いて、遅ればせながら映画本編について。


とにかくオープニングシーンでいきなりふっとばされました。おっさんは意味なくドギマギして大変でしたよ...。このオープニングが示すように本作は実在したロックバンドの伝記映画というよりも、紛れもなく「ガールズ・ムービー」であり、女(監督)の女(W主演)による女(観客)のための映画なわけです。ヤローは引っ込んでろ!すんません、すんません...。


とにかくジョーン・ジェットとシェリー・カーリーの微妙な関係が良かった。ジョーンは生まれついての革ジャンロッカーであり、最後はソロとして成功を収めるけれど、ランナウェイズとして成功したのはやっぱりフロントマンとしてシェリーの魅力が大きかったことが否めないし、ジョーン自身もそれは自覚している。


対してシェリーはボウイの物真似をするほどにはロック好きであっても、別にロッカーになりたいわけではなく、ただ「ここではないどこか」で自分の居場所が欲しかっただけの普通の女の子だった。彼女はロッカーになるにはナイーヴ過ぎで、才能はあるけれど性格的に向いていないというキャラクターだった。そんな2人が組む事で化学反応が起きてミラクルを生んだというのがとても興味深い。


そうした強烈な女性陣の中でセックス・ピストルズにおけるマルコム・マクラーレン的な役割を果たしたキム・フォウリーも相当狂ってて面白かった。ああいう怪しげな香具師って最近はいないのかなぁ。「ウーマン・リブじゃない!女のリビドーだ!」なんてかっこいいセリフ言ってみたいよ。


後半はバンドが分裂するきっかけとなる日本でのライブシーンがあるんだけど、これが日本人としては超見応えあり。個人的には当時の熱狂ぶりって直接は知らないんだけど、シェリー・カーリーのオフィシャルサイトに行ったら、当時の写真があった。コレは怖いw。



去年の傑作ガールズ・ムービー『ローラーガールズ・ダイアリー』と比べると、遥かに辛辣で痛みを伴う内容だけど、革ジャンをまとったジョーンの男気あふれる勇姿と、孤高のロッカーを演じたシェリー(を演じたダコタ・ファニング)はぜひたくさんの女性に観て欲しい。オススメ。


(その他)
・バンド解散のきっかけになったシェリーのグラビア写真を撮影したのは篠山紀信。こちらがその時の写真集。


・現在のシェリーはなぜか「チェーンソー・アート」に目覚めて、チェーンソーで彫刻を造ってたりする。サイトはこちら


ローラーガールズ・ダイアリー [DVD]

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