暴力で守ったモノ、失ったモノ - 『スーパー!』

さえない中年男フランク(レイン・ウィルソン)。彼の妻(リヴ・タイラー)がセクシーなドラッグディーラー(ケヴィン・ベーコン)の後を追って家を出てしまう。愛する妻を取り戻すため、彼はお手製のコスチュームに身を包みスーパーヒーロー“クリムゾンボルト(赤い稲妻)”に変身。イカれた女の子ボルティー(エレン・ペイジ)を相棒に、危険地帯の犯罪に立ち向かうフランクだったが……。


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渋谷で初日に『スーパー!』を観ました。ユル〜いコメディと思ったら、非常にショッキングな内容でビックリ!


一般人が自前のコスチュームでヒーローになる、という内容からどうしても映画『キック・アス』を彷彿とさせます。『キック・アス』はさえない高校生がヒーローを目指すという冒頭までは「もしかしたらこういう奴いるかも?」と思わせるものがありましたが、ビッグ・ダディ&ヒット・ガールが登場するあたりからは完全にファンタジーとなり、マンガの世界(原作はアメコミなんだからもちろんマンガなんだけど)になってリアリティは希薄になります。


対して『スーパー!』ですが、冒頭のユルユルなアニメーションや、クリムゾン・ボルトのアホみたいなコスチュームに、「ポップでおバカなコメディ(イヤな表現ですね)」かと思わせますが、実は徹底的にリアルで辛辣な映画なのでした。見事に騙されたよ!


冒頭のアニメ。楽しそ〜


特殊能力持たないどころか、むしろ臆病者でケンカなんかしたことない主人公フランク。クリムゾン・ボルトに変身しても弱っちいのは変わらないので、「レンチ」を武器に戦います。マヌケなコスチュームで悪人(といっても街のチンピラや、列に割り込む小市民)をやっつけるその様は最初こそ笑えますが、一方的にレンチでボコボコにされた悪人の頭が陥没し血まみれになっていくのを見て、観客の笑いは次第に凍りついていきます。


レンチ、デカ過ぎんだろ...


「悪人を倒す」という一応の大義名分がある「暴力」を、笑っていいのかどうか分からなくなるそのギリギリのところで表現しているバランス感が絶妙で、「暴力」を安易に魅力的にも否定的にも描いていないところが良かったです。


さらに押し掛け女房ならぬ、押し掛け相棒になるのがエレン・ペイジ扮するリビー!フランクも相当頭のネジが緩んだ男ですが、リビーはさらにぶっ飛んだ性格をしていて、フランク以上に暴力の衝動に歯止めが効かない暴走列車となってしまいます。


エロエロでボンクラなエレン・ペイジさん


ヒーローというよりも「頭がイカれた二人組」となってしまい、暴力の虜となった彼らの末路は壮絶で、本当にびっくりさせられました。彼らが暴力で守ったモノと、暴力で失ったモノが何なのか?ぜひ劇場で確認して欲しいです。超オススメ!


(その他)
・内容が『キック・アス』と被っていて、タイトルが『スーパー8』と被っていて紛らわしい。
・『ローラーガールズ・ダイアリー』と続けて観るのは非常に危険なので注意。
・ポスターの出来は今年ナンバー1じゃなかろうか。
・字幕で必要と思えない伏せ字がたくさんあって、非常に鬱陶しかった。


キック・アス Blu-ray(特典DVD付2枚組)

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