必要ないのにウルトラメガ盛り - 『ステキな金縛り』

失敗が続いて後がない弁護士のエミ(深津絵里)は、ある殺人事件を担当することになる。被告人は犯行が行われたときに自分は金縛りにあっていたので、完ぺきなアリバイがあると自らの身の潔白を主張。エミはそのアリバイを実証するため、被告人の上に一晩中のしかかっていた幽霊の落ち武者、六兵衛(西田敏行)を証人として法廷に召喚させるが……。


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娘のリクエストで観ました。これまでの三谷幸喜作品は観た事なくて、今回初めて鑑賞しました。


娘も私も劇場の人も皆けっこう笑ってました。中盤くらいまではテンポよく進んでいて良かったのですが、後半ややグダグダになってしまったのが残念でした。ギャグの1つ1つは笑えるのですが、全体の流れを考えたらこの場面っていらないんじゃない?という箇所がいくつかあるように感じました。何しろ本作は142分もあるんです。


とはいえ、この映画はカットすることが難しいと思います。なぜならほとんどの場面に有名俳優がゲスト出演してるから。


ここで、映画を観た前日にフジテレビで放送された『ステキな隠し撮り』というドラマの話をします。最初はてっきり映画のメイキングか何かと思っていたのですが、実際には『ステキな金縛り』のキャストが総出演したまったく別のドラマ、という変わった体裁の番組でした。


主人公は『〜金縛り』と同じ深津絵里です。彼女は高級ホテルの新米コンシェルジュ役で、やっかいな宿泊客から次から次へと変わった依頼が舞い込み右往左往するというコメディでした。そのやっかいな客の1人が何と三谷幸喜本人でした。


ドラマの三谷幸喜は、「新作映画が公開直前で非常にナーバスになっている映画監督」というほとんど現実そのままな役でした。事前に映画を観ていた深津絵里は、感想を求められ(仕事抜きに、おそらくは本心で)「最高に面白かった!」と大絶賛するのですが、監督は謙遜しつつも「でも、強いて言えば、何か、1つくらい、気になった事があるんじゃない?」と執拗に食い下がります。


あまりにしつこく言われた深津絵里が根負けして「まぁ、強いて言えばですけど...」と前置きしてネガティブな意見を言ったとたんに、監督は「もうダメだ!お終いだ!」と絶望し、「あのシーンはいらない、長過ぎる、って言う人がいるんだ!」と大騒ぎするのでした。


ワハハ!分かってんじゃん!


この映画ってストーリー自体はシンプルなんで、本来なら役者も少人数でシンプルな作りにした方がいいと思うんですよ。でもこれだとヒットするか不安になってきて、つい大物俳優にゲスト出演頼んだらノリノリでOKされ、そうこうするうちにゲストの人数が増え過ぎてしまい、元々必要なかったキャラとか作ったりするうちに、気がついた時にはシンプルな親子丼の上にカツとか海老とか海鮮とか盛られていた、のかもしれませんね。好意的にとらえれば、ですけど。


まぁ、何と言うか、映画自体の問題点、失敗点を別のドラマで自虐的なギャグとして消化させるという離れ業が見られたのでとりあえずいいかなー、という気持ちになりました。次回作はゲスト俳優を減らしてシンプルな作品を目指してほしいです。