『グリンチ』公開記念 ドクター・スースについて
アニメ映画『グリンチ』の公開が近づいてきたので、日本ではあまり知られていない『グリンチ』の原作者ドクター・スース(Dr.Seuss)について書いてみます。
ドクター・スース(本名セオドア・スース・ガイゼル)はアメリカの絵本作家です。彼の絵本の特徴は子供でも分かる簡単な英単語しか使ってないこと、文章が韻を踏んだりして声に出して読むとリズミカルで楽しいこと、それに個性豊かでキテレツなキャラクターが登場することです。
例えば『Fox in Socks』という絵本の冒頭はこんな感じ。
Knox in box. Fox in socks.
Knox on fox in socks in box.
黄色いKnoxと赤いFoxがBoxに入ったりSocksを履いたりしてます。アメリカの小学校には必ずドクター・スースの絵本が置いてあり、子供たちの多くは彼の絵本で英語の基礎を学んでいて、それゆえ「現代のマザー・グース」とも呼ばれています。
彼の誕生日の3月2日はアメリカでは全国読書デーに設定されていて、学校や図書館で読み聞かせのイベントが各地で行われます。
とにかくアメリカでの知名度は絶大で、日本でいうとやなせたかしや藤子不二雄のように彼のキャラクターを知らない人はいません。
フロリダのユニバーサル・オーランド・リゾートにはユニバーサル・スタジオとアイランズ・オブ・アドベンチャーという2つのテーマパークがあります(日本のディズニーランドとディズニー・シーのような感じ)。アイランズ・オブ・アドベンチャーには日本にもある「ザ・ウィザーディング・ワールド・オブ・ハリー・ポッター」があって、それと同じくらいの広大なスペースで、ドクター・スースのキャラクターのアトラクションを集めた「スース・ランディング」があったりします。
↓こちらがスース・ランディング
嫁さんがドクター・スースのファンだったので、20年ほど前にこのスース・ランディングに行ったのですが、アメリカの老若男女がドクター・スースと彼のキャラクターに夢中になってるのを見てとても驚きました(日本での知名度があまりにも低いので)。
ここからドクター・スースの代表作をいくつか紹介します。
- 『How The GRINCH STOLE CHRISTMAS !』(『グリンチ』)
孤独でひねくれ者のグリンチがクリスマスで浮かれる町の人を困らせようとクリスマスを盗むというストーリー。今回のアニメ映画の前にロン・ハワード監督による実写版『グリンチ』(主演ジム・キャリー)が2000年に公開されています。ティム・バートンは自身の『ナイトメアー・ビフォア・クリスマス』について、『グリンチ』の正反対のストーリーとして考えたと言ってます。
- 『The Cat in the Hat』(『キャット・イン・ザ・ハット』)
The Cat in the Hat (Beginner Books(R))
- 作者: Dr. Seuss
- 出版社/メーカー: Random House Books for Young Readers
- 発売日: 1957/03/12
- メディア: ハードカバー
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「グリンチ」と同じくらい人気があるのがこの『The Cat in the Hat』。家で留守番をしている退屈な兄妹の元に突然現れた「帽子をかぶった猫」が大騒動を巻き起こすナンセンスストーリー。アメリカで記録的大ヒットとなった実写版『グリンチ』に続けと、マイク・マイヤーズ主演で実写映画化されましたが、あまりにも不気味なキャラクター造形が仇となり、その年のゴールデン・ラズベリー賞(最低な映画を決める賞)に数多くノミネートされ、結果「コンセプトが全てで中身空っぽ賞」を受賞しています。ちなみにこの時はジェニファー・ロペスの『ジーリ』がほとんどの賞を受賞してますw。
↓うん、まぁ怖いよね。隣は当時大人気だったダコタ・ファニング。
本作は日本公開(邦題『ハットしてキャット』!)が決まって某アパレルブランドとのタイアップコラボ商品まで販売されたものの、突然公開中止になってDVDスルーになりました。グッズが買えただけ良かったけどね。
- 『Horton Hears a Who!』(『ぞうのホートンひとだすけ』)
- 作者: ドクター・スース,Dr.Seuss,わたなべしげお
- 出版社/メーカー: 偕成社
- 発売日: 2008/06/01
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ジャングルに暮らす象のホートンはある日小さな小さな誰かの助けを求める声を聞きます。しかし他の誰にもその声は聞こえないので一悶着が起きるというストーリー。普段気がつかない弱者の声に耳を傾けようというテーマがあります。『The Cat in the Hat』の実写化で懲りたのか、CGアニメとして映画化されました(邦題『ホートン ふしぎな世界のダレダーレ』)。心優しいホートンの声を実写版『グリンチ』にも主演したジム・キャリーが担当してます。
- 『The LORAX』
環境破壊が進んで草木が無くなった世界が舞台のエコなストーリー。イルミネーションが『グリンチ』に先駆けてドクター・スース原作をCGアニメ映画にしました。邦題は『ロラックスおじさんの秘密の種』でロラックスおじさんの吹き替えを志村けんが担当してます。個人的にはお行儀が良すぎてあまり好きではない一本。
- 『Green Eggs and Ham』
Green Eggs and Ham (Beginner Books(R))
- 作者: Dr. Seuss
- 出版社/メーカー: Random House Books for Young Readers
- 発売日: 1960/08/12
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Sam-I-amというキャラクターが執拗に「Green Eggs and Ham」(緑色の卵料理とハム)を勧めて、それをひたすら断るというナンセンスでハチャメチャなストーリー。
Do you like green eggs and ham?
I do not like them,Sam-I-am. I do not like green eggs and ham.
その後もSam-I-amの勧めは止まりません。
「こっちだったら食べる?あっちだったら食べる?」
「家(House)の中だったら食べる?ネズミ(Mouse)と一緒だったら食べる?」
延々と断固拒否していた彼はとうとう根負けし、ついに「Green Eggs and Ham」を食べます。すると…
初めて「Green Eggs and Ham」を食べた彼は「おいしい!この味大好きだ!」と絶賛します。これナンセンスな言葉遊びに見せかけて、肌の色などで他者への偏見を持たずに一度試してみたら?ということを子どもに伝えてるんですよね。とてもクレバーで面白いと思います。
この「Green Eggs and Ham」ですが、「スース・ランディング」で実物を食べることができて感激しました。また『Green Eggs and Ham Cookbook』という実際に料理として作ることができるレシピ本も売ってたりします。
- 作者: Georgeanne Brennan,Dr. Seuss
- 出版社/メーカー: Random House Books for Young Readers
- 発売日: 2006/10/24
- メディア: ハードカバー
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↓「Green Eggs and Ham」の絵本はこちらの動画で見れます
Green Eggs and Ham by Dr Seuss Read Aloud
ドクター・スース作品は、映画化される前にはテレビアニメ化もされていて、グリンチとキャット・イン・ザ・ハットが共演する「夢の対決」っぽい企画モノもあって、こちらも結構好きです。
Dr. Seuss - The Grinch Grinches the Cat in the Hat (1982)
ということで、ドクター・スースについてあれこれ書いてみました。アニメ映画版『グリンチ』は声をカンバーバッチさんが担当しているということで楽しみにしてます(イルミネーション作品あんまし好きじゃないし、そもそも字幕版公開されるのか不安だけど)。
ところで鳥山明の『ドクター・スランプ』というタイトルって、実は「ドクター・スース」から取ってたりしないかな?と以前から思ってるのですが、どうなんでしょうか?ドクター・スースの絵本の世界には直線は存在せず、建物も曲線でできてるんだけど、ペンギン村の建物もそんな感じだよなーと…。