ロアルド・ダールの伝記『「チョコレート工場」からの招待状』を読みました
ロアルド・ダールの子供向け伝記『「チョコレート工場」からの招待状』を読みました。元々パイロットでその後作家になった、くらいは知ってましたが、3歳の時に姉と父親が立て続けに亡くなったり、ハリウッド女優と結婚して5人の子供に恵まれたものの、長男は4ヶ月でタクシーにはねられ脳に重い障害を負い、長女は7歳で病気で亡くなり、妻は四女妊娠中に脳卒中で倒れたりと、波乱万丈の人生を送ってる事等は初めて知りました。
ロアルド・ダール作品は数多く映画化されていて、有名なのは『ジャイアント・ピーチ』(原作タイトルは『おばけ桃が行く』)に『チャーリーとチョコレート工場』(『チョコレート工場の秘密』)に『ファンタスティック Mr.FOX』(『素晴らしき父さん狐』)等々。どれも大好きだし傑作だと思う。
これらはいわゆる児童文学作品で子供向けに書かれているけど、ダールという作家が面白いのは大人向けのブラックユーモア「異色短編作家」でもある事。中でも『南から来た男』という短編はミステリ・マガジンで、ミステリ小説オールタイム・ベストの短編部門第1位に選ばれていたりする。
↓『南から来た男』収録書籍
イギリスではダールの大人向け短編を映像化し、ダール本人がストーリーテラーを務めたテレビ番組『ロアルド・ダール劇場/予期せぬ出来事』がある(途中からダール原作以外も放送してた)。こちらはDVDになってるので興味ある人は見て欲しい。『世にも奇妙な物語』の元ネタはこの番組かもしんない。
↓『ロアルド・ダール劇場/予期せぬ出来事』で前説中のダールさん
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あと映画でいえば、『007は二度死ぬ』や『チキ・チキ・バンバン』の脚本も書いてる。どちらかといえば寡作な作家だけど、傑作が多い人だと思う。
さっきも書いたように「子供向け作品」と「大人向け作品」をどちらも書いていた事から、個人的には藤子・F・不二雄を思い出した。正確に言うと、「楽しい子供向け」の藤子・F・不二雄と、「エグい大人向け」の藤子 不二雄Ⓐかな。つまり1人藤子不二雄といえる(ややこしい)。
子供にはとても人気があるダール作品だけど、批評家の中には「子供にふさわしいとはいえない」と批判する人も多いらしい。ダール作品には冷徹で残酷な大人や権力者から理不尽な扱いを受けた子供が最終的に反撃に出るというパターンが多い(『おばけ桃が行く』や『マチルダは小さな大天才』等)けど、それを「やり過ぎだ」と思うそうだ。
ダールは幼い頃に姉と父親を亡くし、寄宿学校で先生や上級生から理不尽な暴力を受けた事を生涯忘れる事がなかったという。ダールは自分自身と他の児童文学作家との違いについて「子ども時代がどんなものだったかをおぼえていること」と言ったそうだ。大人の目から見た「(無垢な)子供の世界」と、実際の「(残酷な)子供の世界」は違っている事を理解しているからこそ、ダールの作品は子供に人気があるのだと思う。
自身の作品を批判された際のダールの言葉がイカしてる。
「わたしは子どもから抗議をもらったことはいちどもない」
「チョコレート工場」からの招待状―ロアルド・ダール (名作を生んだ作家の伝記)
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チョコレート工場の秘密 (ロアルド・ダールコレクション 2)
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