スパイク・ジョーンズとソフィア・コッポラの不思議な関係について
スパイク・ジョーンズの新作『her/世界でひとつの彼女』が今月ようやく日本公開になるので、思いつきでスパイク・ジョーンズとその元妻であるソフィア・コッポラの関係について書いてみます。
二人の出会いについては詳しくは分かりません。スパイクは映画監督になる以前は多くのユニークなミュージック・ビデオの監督として有名になりましたが、そのきっかけになったのはソニック・ユースが彼のスケボーのビデオを気に入って「100%」のミュージックビデオ監督に抜擢したことでした。
そしてソフィアもソニック・ユースとは以前から交流があり、ファッションブランドX-girlを立ち上げたキム・ゴードンの影響で、95年にブランドMILK FED.を立ち上げています。このあたりから映像制作にも関わるようになりその結果「ガーリー・カルチャー」の中心人物となっていきました。なのでソニック・ユースとの交流というのがきっかけだったのかもしれません。
そんな二人の共同作品となったのが、97年に発表されたケミカル・ブラザーズ「Elektrobank」のミュージックビデオ。スパイクが監督で、ソフィアはなぜか新体操の選手役として登場しています。ケミカルのビートと新体操という組み合わせがユニークなとてもスパイクっぽいビデオで、この頃から交際が始まったのかもしれません。
二人が結婚したのは99年。この年にはスパイクは長編一作目『マルコヴィッチの穴』が公開され、あまりにも奇想天外なストーリーが話題になりました。そしてソフィアも同じく長編一作目『ヴァージョン・スーサイズ』が公開され、こちらも「フランシス・コッポラの娘」という事やガーリー・カルチャーの盛り上がり等もあって、大きな話題となり、どちらも高く評価されました。
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スパイクの長編二作目の『アダプテーション』(2002年)の主演はニコラス・ケイジでした。彼は言うまでもなくコッポラ・ファミリーの一員であり、ソフィア・コッポラのいとこです。ソフィアとの関係からこのキャスティングとなった可能性は十分あります。
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そして『アダプテーション』の翌年である2003年に二人は離婚しました。真相は不明ですが、一説によればスパイクが『マルコヴィッチの穴』に出演していたキャメロン・デイアスと浮気をしたからと言われています(あくまでも噂)。
この2003年にはソフィアの二作目である『ロスト・イン・トランスレーション』が公開されています。東京が舞台となっていて、CM撮影のため来日したビル・マーレイ演じる俳優と、「カメラマンの夫」に同行したスカーレット・ヨハンソン演じる女性との交流を描いたものですが、これはソフィア自身の体験を反映していると言われています。
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ここで出てくるのがスパイクが製作総指揮をつとめる『ジャッカス・ザ・ムービー』(2002年)。この撮影の為にスパイクを初めとしたジャッカスの一員は日本に来ていて、これにソフィアも同行していたようです。そして妻をホテルにほったらかし(?)にして、寿司屋で鼻からワサビ吸ってゲロを吐くwなんてことを毎晩やっていた模様ですw。おそらくですが、ソフィアは『ジャッカス』の事嫌いだと思いますw。
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↓寿司屋のシーン(一応閲覧注意な)
『ロスト・イン・トランスレーション』の話に戻ると、劇中登場する妻をほったらかして仕事に熱中する「カメラマンの夫」は見た目がスパイクにそっくりだし、夫の浮気相手(頭空っぽのバカとして描いてる)のモデルはキャメロン・ディアスと言われています(ソフィア自身は明言を避けている)。それはそれとして自分自身をモデルとした女優にスカーレット・ヨハンソンを選ぶのってスゴいと思います…。ちなみにソフィアの現在の夫はバンドフェニックスのボーカルであるトーマス・マーズで彼との出会いは『ロスト・イン・トランスレーション』サントラへの参加だったようです。
続く『マリー・アントワネット』では主人公のマリー・アントワネットの夫ルイ16世は「女に興味がない不能者」として描かれていて、マリーはその事で欲求不満を爆発させ国の財政を傾ける程の浪費に走るのでした。これは(おそらく)史実ではありますが、これまでの経緯で色々考えさせられました…。かようにソフィアは「自身の体験や想い」をストレートに映画に取り入れる傾向があると思われます。
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対するスパイクですが、『かいじゅうたちのいるところ』でいくつか興味深い場面がありました。原作者のセンダックに「君の個人的な作品として撮るべきだ」と進言を受けた事もあってか、本作には原作には登場しないマックスの姉が登場しています。これはスパイクの幼少期の家族構成(両親は離婚して母と姉の三人暮らし)と同じです。また「かいじゅう」のキャロル(優しい面もあるけれど子供っぽく癇癪を爆発させる事がある)をスパイク自身と考えると、かつてキャロルの恋人だったが今は別れているKWはソフィアがモデルなのかもしれません(あくまでも私の妄想)。
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そして問題作(?)『ロスト・イン・トランスレーション』から11年後に公開されるのがスパイクの新作『her/世界でひとつの彼女』なわけですが、公表されてるストーリーはこんな感じ。
近未来のロサンゼルスで、セオドア(ホアキン・フェニックス)は相手に代わって思いのたけを手紙にしたためる代筆ライターをしていた。長きにわたり共に生活してきた妻キャサリン(ルーニー・マーラ)と別れ、悲嘆に暮れていた彼はある日、人工知能型OSサマンサ(スカーレット・ヨハンソン)と出会う。次第にセオドアは声だけで実態のない彼女の魅力のとりこになり……。
ここで気になるのが、主人公が恋する人工知能OSの声を演じるのが『ロスト・イン・トランスレーション』でソフィアの象徴であったスカーレット・ヨハンソンなんですよね。実態がなく声だけの存在というのが、いくらでも深読みできそうで気になります。本作ではスパイクは初めて単独で脚本を書いていて、その結果アカデミー賞脚本賞を受賞しています。この脚本にスパイク自身の「体験や想い」がどれだけ含まれているのかは分かりませんが、何はともあれ公開が楽しみです!
『her/世界でひとつの彼女』オフィシャルサイト
スパイク・ジョーンズのネット上での回答が、神対応である件 | VICE Japan