殺人のあとの日常 - 『ヒーローショー』
アルバイトでヒーローショーの悪役を務めるユウキ(福徳秀介)。バイト仲間のノボルが、ユウキの先輩である剛志の彼女を寝取ったことから、ある日ショーの最中に激しい殴り合いが始まる。それだけにとどまらず、剛志は悪友たちと共にノボルをゆすろうとするが、ノボルも自衛隊出身の勇気(後藤淳平)を引き入れ、対抗する。
まったくノーマーク作品でしたが、Twitter上で古泉さんや罪山さんが絶賛されていたので、それならばと鑑賞。結果大変面白かったです。
先日『アウトレイジ』を観て「ヤクザの暴力こえー」と思ったが、ヤクザは暴力のプロなので、「どこまでやれば死ぬ」ことを熟知した上でやってる(と思う)。それに対してヤンキー(DQN?)、および一般人は暴力の止め時が分からず、ただ勢いだけで進む。これがものスゴく怖い。
映画の前半は負のピタゴラスイッチ的な暴力の連鎖がリズム良く起きて、その結果あっさりとリンチで死人が出ることになる。この「あまりにも後先考えなさ過ぎ」な激安殺人へのプロセスが1つの見所ではあるけれど、この映画のユニークなところは「このリンチシーンが中盤に起きる」ところだったりする。
まったく意図してなかった殺人にあわてふためく当事者達。この時点で誰が被害者で誰が加害者か、または誰が悪役でだれが正義(ヒーロー)かは極めて曖昧となる。そしてとりあえず死体を埋めようとしてショベルカーを持つ知人に連絡するが、待ち合わせの駅でお互いの外見を知らずぐるぐる廻り続けるといったストーリー上まったく無意味なシーンがだらだらと続く。
このだらだら感がすごくリアルで怖い。トラブルはあくまでも当事者にだけ起きているだけであり、自分達以外はいつもの当たり前の日常が流れている。そしてそれはうっかりすると殺人が起きたことすら忘れてしまいそうなくらいで、もしかしたらこのまま通常の生活に戻れるような錯覚すら感じてしまう。もちろんそんなことはないのだけれど。
初見時は134分という上映時間は長過ぎると感じたし、もっと短くタイトにまとめられるじゃん!と思ったけど、井筒監督はむしろこの「リンチ殺人」以降のだらだら感を観客にも体験させる意図があったのかも、とひとりごちました。爽快感ゼロな暴力の怖さを知りたい人には強くオススメ。
(追記)
いつもの映画評論家のレビューを今さら読んでびっくりした。
逃げなかったのは2人の行く末に己の未来を重ね合わせていたからだろう。
ヒーローショー - こんな映画は見ちゃいけない!
お前、映画観てないだろ!
(その他)
・最強DQNの鬼丸兄弟のパーマの方って、THE MAD CAPSULE MARKETS / AA=のTAKESHIに似てるよね?似てない?
・ちなみに私が初めてデートで観た映画は井筒監督の『二代目はクリスチャン』。もっとコメディっぽいと思ったら後半子どもが死んだりとかなりイヤーな展開で大変でした。
(参照)
井筒監『ヒーローショー』は息ができない: 古泉智浩の『オレは童貞じゃねえ!!』
これは他人事じゃない! 映画『ヒーローショー』 - 俺の邪悪なメモ
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