マトモな国のアリス - 『アリス・イン・ワンダーランド』


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白ウサギと遭遇したことによって不思議の国へと迷い込んだアリス。そこは、美しくもグロテスクなファンタジーワールドで、トゥィードルダムとトゥィードル ディーや、赤の女王とその妹で慈悲深い白い女王たちに出会う。


90年代にニュー・オーダーのバーナード・サムナーと元スミスのジョニー・マーが組んだELECTRONICというユニットがあった。この2人が組むと聞いて「メランコリックな打ち込みにジョニー・マーのギターがかぶさることで素晴らしい化学反応が起きるのでは?」と期待した人は多いハズ。しかし出来上がったデビュー・アルバムではジョニー・マーはほとんどギターを弾かずにひたすら打ち込みをやっていて、ひどくしょぼいサウンドだったのでかなりがっかりしたのでした(一応書いておくと2ndと3rdは結構良かった。売れなかったけど)。


という風にあまりにも出来過ぎた組み合わせというものは、想像したほどの結果を出せなかったりすることが多い。なので『不思議の国のアリス』とティム・バートンというこれ以上ないベストな組み合わせを聞いた時には、超期待もしたし、同時に不安にもなった。


そんな気持ちでIMAXに3D版を観に行きましたが、結果的にはそこそこは楽しめました。


今回の『アリス〜』は『不思議の国のアリス』の後日談で、大人(19歳)になったアリスが再びあの世界を訪れるわけですが、最近のディズニー作品『魔法にかけられて』や『プリンセスと魔法のキス』同様に、「古典に対する敬意と現代風のアップデート」がなされていて、最終的にアリスは自らの意志で赤の女王と戦うことを決意する成長物語になっていました。


さらに今作では原作の『不思議の国のアリス』はあくまでも「6歳のアリス自身が体験し感じたもの」で、実際あの世界は「ワンダーランド」ではなく「アンダーランド」だったという設定になってました。このあたりの構成は非常に面白いしよくできてると思います。


しかしこの映画に期待した人が求めていたのがこんな全うな成長物語だったかというと多分違うんですよね?少なくとも自分はディズニーアニメ版にあったような何から何まで気が狂ったナンセンスな世界をもっと見たかったというのが本音(原作は未読です)。「世界はもう、マトモではいられない...。」というキャッチコピーのわりに、アンダーランドの住人は見た目こそおかしいけど結構マトモでちゃんと話が通じるんですよね。しかもアリスを助けるために自分を犠牲にしようとさえする。マッド・ハッターにはいかなる時でも場の空気を読まずに「何でもない日ばんざい!」とか言ってて欲しかった。


と言ってもそれなりにおかしな人もいてその筆頭はヘレナ・ボナム=カーター演じる頭が大きな赤の女王。彼女のキャラは『バットマン・リターンズ』のペンギンを彷彿とさせるコンプレックスを抱えた哀しき異形の悪役でとても良かったです。しかしそれよりも魅力的だったのがアンちゃん(アン・ハサウェイ)演じる白の女王。あの世界の中ではかなりマトモな役かと思ったら、逆にそうでもなかったのでずっこけました。


それにしても、ティム・バートンはヘレナ・ボナム=カーターにあんな役をやらせて大丈夫なんだろうかとちょっと心配になりました。絶対アンちゃんのこと気になってるよねぇ?違う?


↓この差はいったい...。


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