これは恋ではない-『(500)日のサマー』

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グリーティングカード会社で働くトム(ジョセフ・ゴードン=レヴィット)は、新入りのサマー(ゾーイ・デシャネル)に一目ぼれしてしまう。ある日、好きな音楽をきっかけに意気投合し、いいムードになった二人。そんな中トムは、サマーに対して「彼氏はいるの?」と聞くと……。


2010年初めての映画として『(500)日のサマー』を渋谷で観ました。超良かった!


主人公トムの性格、言動、ファッション(当日お揃いのジョイ・ディビジョンTシャツ着ていかないで本当に良かった...)、聴いてる音楽等がとにかく他人とは思えない。終始「お前はオレか!」とツッコミながらの鑑賞でした。今ならともかく、若い頃にエレベーターであんな出会いをしたら自分も運命だと思ったハズ。


面白かったのは「同じモノを別の視点で見る」演出が多用されていたこと。ラブラブな時には「ハート」に見えていたあざはうまくいかなくなった時に「××××」に見えるようになったり、同じIKEAデートでもまったくリアクションが違ったり、「理想」と「現実」で画面を分断したり。


その中でも1番印象的だったのが映画『卒業』を観るシーン。


トムは『卒業』を「困難の末に運命の二人が結ばれる」映画と解釈した(と思われる)が、実際にはどうか?


以下『卒業』wikiより引用

二人は手に手を取って教会を飛び出す。

長距離バスの後部座席に腰掛けた二人は、エレーンの花嫁姿という格好に衆人環視を受けながら、どこかへと旅立っていく。

このときのバスの乗客が老人たちであったことから、それは「今後の二人の将来が必ずしもバラ色の未来ではない」という暗示であるという説がある。座席のベンジャミンと花嫁衣装のエレーンは、着席直後こそ笑っているものの、その笑顔はすぐに顔から消える。焦点の合わない視線は中にとどまり、表情は深刻味を帯びている。それぞれの両親からの決別とも言える二人の行為の結果、未来や現実、人生に対する二人の不安を象徴するような印象的なシーンである。


サマーがこの映画を観ながら泣くシーンがあるが、「運命なんて信じない」とうそぶく彼女が実は人一倍「現実を恐れている」ようにも見える。だから一緒に出かけたりセックスするのは楽しくても、結婚した瞬間に「本当にこの人で正解だったのか?」と考えて不安になってしまうのが怖かったんじゃないか?


そう考えれば飄々としてとらえ所が無いキャラに見えたサマーが心の奥に不安を抱えている女の子に見えて来る。そして恋に恋するトムにはそんな彼女の本当の姿が見えていない。


他に良かったのがサマーと結ばれた翌日にトムが公園でミュージカルを踊るシーン。似たような演出が『魔法にかけられて』でもあったけど、性別が入れ替わってるところが興味深い。おとぎの国からやってきて「永遠の愛」を信じるジゼル姫と(ラブラブ時の)トムは同じような性格だし、離婚を経験し「真実の恋なんかない」というロバートとサマーも同じ。ある意味、裏『魔法にかけられて』ともいえる。


結末もキレイなオチがついて本当に良かった。劇場で買ったサントラも超良かった。あえて言うけど失恋したばかりの人にもオススメ(最後まで観ればの話ですよ。途中で「うわー!」とか叫びながらの退出は厳禁)。


(その他)
Twitterで聞いた情報によれば、エレベーターの出来事は脚本家の実体験が元になっていて(曲もスミス!)、コピー室の出来事は監督の実体験(同僚であるガールフレンドがオフィスにやって来て突然キスした)らしい。すげえ!!!
・「私はスミス好きだけどスミスが好きな男の子とはつきあいたくないなー」という嫁さんは実はサマーっぽい(理系キャラは文系キャラが苦手)。
ゾーイ・デシャネルは『ハプニング』でもその気がない男につきまとわれてましたね。そういうキャラなのか?


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