世界中を敵に回しても-『母なる証明』

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早くに夫を亡くして以来、一人息子のトジュン(ウォンビン)と静かに暮らすヘジャ(キム・ヘジャ)。そんなある日、街で殺人事件が起こり、もの静かなトジュンが第一容疑者に。事件の解決を急ぐ警察がトジュンを犯人と決めつけ、無能な弁護人も頼りにならない中、ヘジャは真犯人を捜し出し、息子の無実を証明しようとする。


『イングロ』や『スペル』は楽しい映画なので感想もスラスラ書けるんだが、『母なる証明』は結構前に観たにもかかわらず内容がヘビー過ぎて感想が書けなかった。傑作だとは思うが「好きか?」と言われたらためらってしまう。映画館を出た時の自分の顔は、冒頭にでてくる「母」の顔に似ていたかもしれない。泣いているのか、怒っているのか、笑っているのか分からない。そんな顔。


ウチの子どもが生まれた時(おそらく生涯最高の瞬間)に真っ先に考えたのが、これで「殺人者の親」になる可能性ができた、だった。絶望先生に負けないくらい超ネガティブな発想だと我ながら思うが、そう思っちゃったんでしょうがない。どんなに親が子を想ったところで、子は勝手に育ち勝手に行動する。想いが強ければ強いほどその溝は深まっていく。


それでも親(母)は子を想わずにいられない。障害を持っているのならばなおさらだ。母は世界中を敵に回してでも子を守ろうとする。その結果生まれたクレバスのような溝を埋める為に、今日も母は「イヤなことを忘れるツボ」に針を打ち、そして踊る。


もし自分の子どもが世界中を敵に回すことになったら?それでも私は子どもの味方でいたいと思う。そんな私にこの母を責める資格はない。


(その他)
・『殺人の追憶』にしろ『チェイサー』にしろ韓国の警察ってこんな感じなの?いいの?
・ほぼ全てのキャラが「二面性」を持っているというのがポイントなんだろうね。
・後半登場する学生がみんな「いい顔」していて笑いをこらえるのが大変でした。