ジージャーVSジャージ男-「チョコレート・ファイター」

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アクションの映像を観ただけで、同じ技を習得できる人並外れた能力を持っている美少女ゼン(ジージャー)は、最愛の母が末期の白血病に侵されていることを知る。ゼンは母からすべてを奪ったマフィアに復讐(ふくしゅう)するため、自ら体を張って抗争に身を投じるが、そこで生き別れになっていた父マサシ(阿部寛)と再会を果たし……。


チョコレート・ファイター」をレンタルで見ました。同監督による「マッハ!」は普段カンフー映画にも格闘技にも興味がない自分にも十分面白かったけど、同時にストーリーがあまりにもベタで単純過ぎるという「アクション映画の限界」*1みたいなのも感じていたので、今作に関しても主人公が女性に変わっただけで似たようなお話(悪者が盗んだブツを取り戻すために元気な女の子がムエタイで大暴れ)だろーとタカをくくっていたら見事にぶっ飛ばされてしまった。


今さらですけど、大傑作じゃないすか!!!!


ジージャー演じる主人公は自閉症で生活するにも他人のケアを必要としているが、その代わり「レインマン」のダスティン・ホフマンのように驚異的な身体能力を持っている(サバン症候群ってヤツだ)。しかも母親が重度の白血病で治療に大金が必要だがもちろんそんな金はないという超暗い設定。さらに終盤、敵のボスキャラみたいなヤツが出て来るんだがこいつが上下ジャージの一見ひ弱そうな男。実はこいつも障害者(詳しくないんだが重度のチック症?みたいな感じ)でそれまで無敵だった彼女を追いつめるという異様な展開。かわいい女の子がいかにも悪そうな大男と戦って勝つみたいな爽快さは皆無で全編ひたすら暗く重い。


↓こいつがボスキャラ。ジージャーVSジャージ男(言いたかっただけ)


さらに今作の特長が「セリフによる説明」をかなり排除しているコト。例えば同居しているムンのコトや母の病気についてもほとんど言葉での説明はない。それでも話が分かりにくいということはなくて、このダークな物語に説得力を持たせるコトに一役買ってる。結果これまで見てきた「分かりやす過ぎる単純なアクション映画」とは一線を画していて非常に良かった。推測だけど、北野武の映画とかに影響受けてるんじゃないかなー。


ここまで来てようやくキモであるアクションの話。「マッハ!」でも感じた「痛みが分かるアクション」は健在で、夜中に1人で見ながらギャーギャー叫んでしまった(私はスプラッターみたいに特殊効果で作られた映像には耐性があるが、ガチで殴り合ったりするのには死ぬ程弱いのだ)。アクション映画のお約束であるエンドクレジットのNG集が今作にもあるのだが、「3Fくらいの高さから数人が落ちてピクリともしない」みたいなハードコアさゆえにまったく笑えず。逆に「今の死んだんじゃないの?ねぇ?ねぇ?」と動揺する始末。


世の中には色んな映画があって、そのどれもがほぼ均一の料金で観れることに時々凄い違和感を覚えるんだが、今作に関しても「こんなに命かけて作られた映画を寝転がりながらレンタルで数百円で見てすんません!」という気持ちになったよ。映画館で観たかった!オススメ!


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*1:別に単純なことが悪いわけじゃなくて、そうせざるをえないのが問題。