吹替え版の悪夢-「ウォレスとグルミット-ベーカリー街の悪夢」


奇想天外な発明品を作っては大騒動を巻き起こしてしまうウォレスと、間抜けな主人を支える愛犬グルミットがパン屋を開店。しかし、ウォレスは街で出会ったかつてのCM女優に恋をして仕事に熱が入らない。そんなある日、パン屋連続殺人事件の犯人にウォレスが狙われていることを知ったグルミットは、主人を救おうと奮闘するが……。

オフィシャルサイト


チネチッタで娘と2人で観ました。


2006年の長編「野菜畑で大ピンチ!」以来の3年振りの新作。UKでは去年のクリスマスにテレビ放送されて58%という高視聴率を記録したらしい。日本では劇場映画として公開されることになったが、29分しかないので過去の短編3作(「チーズ・ホリデー」「ペンギンに気をつけろ!」「危機一髪!」)が同時上映されることに。


原題は「A Matter of Loaf and Death」(直訳だと「パンか死か」)。これはおそらく「A Matter of Life and Death」(「死活問題」)のもじりで、同名のUK映画(邦題「天国への階段」)があるので、こちらが元ネタかも。邦題の「ベーカリー街の悪夢」はもちろん「エルム街の悪夢」から。


ニック・パークはホラー映画が好きなようで、過去の「ウォレスとグルミット」シリーズでもたくさん引用されている。「野菜畑で大ピンチ!」は「吸血狼男」がモチーフになってるし、「ペンギンに気をつけろ!」も「危機一髪!」もオープニングはホラー・テイストだ。


今作のオープニングもホラー/サスペンス風で、つかみはばっちり(娘は怖くて耳を塞いで震えていた)。そこからの展開はいつもの通りで、女にうつつを抜かすウォレスをしっかり者で健気なグルミットが助ける黄金パターン。色んな映画(「ゴースト」、「サイコ」等)のパロディが多いのが今作の特長で、中でも「エイリアン2」のパロディには爆笑させられました。


↓パロディ画面はこちらから見れます(本編観た人のみ推奨)。
ゴースト」「サイコ」「エイリアン2


そんなこんなであっという間の29分間、大変楽しめました。ただし1点を除いて。


今作から吹替えキャストが変更になっていて、ウォレス役が萩本欽一から津川雅彦になっている。そして今回同時上映の短編3作も同様に津川版に差し替えになっているのだが、はっきり言って下手過ぎる。おじいちゃんが孫相手に子供っぽく話しているみたいですっごく不自然。


別に欽ちゃんが良かったとも思わないが、何故わざわざ変える必要があったのか?そしてなぜ、声優経験のない津川なのか?ウォレスの年齢設定は知らないが、現時点で69歳の津川の声が合うハズもないし、年齢はともかくなぜプロの声優に頼まないのか?


俳優やお笑いタレントが吹替えを担当するのは珍しくもないし、時々すごくハマっていることだってある。もしダメだった時も普通の映画ならそれっきりだけど、「ウォレスとグルミット」は今後もおそらく続くだろうし、数年後の新作でも津川が担当するのかと思うと泣けてくる。そもそもこいつ生きてるのか?


加えて「チェブラーシカ」に続いて、「ウォレスとグルミット」もジブリに取り込まれたみたいで気分が悪い。作品自体は文句無しに面白いんでオススメしたいが複雑...。


(その他)
・声優変更に合わせてセリフ等もかなり変わっていて、「危機一髪!」に登場する羊は欽ちゃん版では「プルプル」でしたが、津川版では英語版と同じ「ショーン」に戻ってます。
・ニック・パークは「ウォレスとグルミット」に関してはもう長編を作らない、つもりのようです。どうなることか?


(参考)
↓今作の映画パロディをまとめたEMPIRE ONLINEの記事を日本語に翻訳されています。グッジョブ!
ウォレスとグルミット新作"A Matter of Loaf and Death"での映画的駄洒落-猫の毛玉 映画館


そこに愛はあるのか?-「チェブラーシカ」 -THE KAWASAKI CHAINSAW MASSACRE


Wallace & Gromit THE CURSE OF THE WERE-RABBIT -THE KAWASAKI CHAINSAW MASSACRE


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