「かいじゅうたちのいるところ」とジョン・ラセターとスパイク・ジョーンズ
映画&絵本「かいじゅうたちのいるところ」について-THE KAWASAKI CHAINSAW MASSACRE
↑こちらのエントリを書いて9ヶ月。「Where The Wild Things Are(かいじゅうたちのいるところ)」はUSで10月公開が決定し、オフィシャルサイトもオープンして盛り上がってきてます(私はしょっちゅうこの予告編を見てモニタの前で泣いてる)。
「Where The Wild Things Are」オフィシャル
「映画秘宝」最新号にも記事が載っていたが、その中に
と書かれていた。
この書き方だと、ワーナーがジョン・ラセターにサンプル・アニメの製作を依頼したようにも取れるけど、おそらくそれは誤り。確かにジョン・ラセターは「かいじゅうたちのいるところ」のCGアニメを作ってはいるけど、それは今から約27年前の話。
当時のラセターはアニメーターになる夢を持ってディズニーで働いていたが、自分が本当にやりたい事ができずに行き詰まっていた。そんな中製作中の「トロン」で初めてCGに出会い感動したラセターは、CGの背景と手書きのキャラクターを組み合わせる手法で30秒のテスト映像を作成した。それがラセター版「かいじゅうたちのいるところ」。
↓Where The Wild Things Are - Early DISNEY CG Animation Test
ところがディズニーはこの映像をあまり評価せず、直後にラセターはディズニーをクビになる。そして以前から知り合いだったルーカス・フィルムのコンピュータ部門が彼を雇うことになる。
キャットムルはその日遅く、仕事の件でスミスに電話をかけた。話が一段落すると、キャットムルは何気なく言った。「ジョン・ラセターにばったり会ってね。もうディズニーでは働いていないようだよ」
スミスは、即座に電話を置いてラセターを今この場で雇え、と迫った。
「メイキング・オブ・ピクサー」より
こうして「技術はあるがアニメの知識がない」技術者と「CG表現に興味を持ったアニメーター」が運命的な出会いをしたのだ。数年後、(アップルを追い出された)スティーヴ・ジョブスがコンピュータ部門を買収し、PIXARが生まれることになる。
話を「かいじゅうたち〜」に戻そう。
「映画秘宝」の記事ではスパイク・ジョーンズと原作者モーリス・センダックとの興味深い逸話も載っていた。CG全盛のこの時代に着ぐるみ撮影にこだわったスパイク・ジョーンズとジョン・ラセターはまったく異なるタイプにも見えるが、実は結構近い感覚を持っているのでは?と私は思っている。
それを意識したのがスパイク・ジョーンズが監督した「IKEA」のCMを見てから。
↓Spike Jonze Ikea ad
このCMの最後はこんなナレーションで終わる。
Many of you feel bad for this lamp. That is because you crazy. It has no feelings. And the new one is much better.
(意訳)
「このランプを"かわいそう"と思った人はおかしいです。ランプに感情なんてないですよ。新しいモノの方がいいに決まってます」
ランプといえば、PIXARの「ルクソーJr.」を思い出す人も多いはず。
↓Luxo Jr
この短編でラセターは感情がないハズのランプをまるで生きているかのように表現した。そしてスパイク・ジョーンズもまたランプが感情を持っているかのように表現した(さらにオチまでつけて)。一見正反対のようでやってることは実は同じなのだ。
何はともあれ「コラライン」(日本公開まだー?)と「かいじゅうたちのいるところ」が楽しみな今日この頃です。
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