ゼア・ウィル・ビー・ブラッド

ゼア・ウィル・ビー・ブラッド [Blu-ray]

ゼア・ウィル・ビー・ブラッド [Blu-ray]

オフィシャルサイト

石油ブームに沸く20世紀初頭のカリフォルニア。鉱山労働者のプレインビュー(ダニエル・デイ=ルイス)は、石油が沸く源泉があるという情報を耳にする。息子(ディロン・フリーシャー)とともに石油採掘事業に乗り出したプレインビューは、異様なまでの欲望で富と権力を手にしていく。


劇場で見ることができなかったのでBlu-rayを購入して自宅鑑賞。

人として軸がぶれている」と歌ったのは大槻ケンヂですが、「まったくブレがない男」なのが主役のダニエル・プレインビュー。「石油を掘り当てて一山当ててやるぜ!」という欲望自体はありふれているが、一般的にソレは「金持ちになって、いい暮らしをして、いい女を抱いて」といった最終目的に対する過程でしかない。ダニエルは違う。彼にとっては「石油で一山当てる」こと自体が目的でありそれ以外の欲望はない。働きアリが自分自身の幸せを考えて行動しないように。

そんなピュアな男の一生を驚異的に熱演したダニエル・デイ・ルイスは素晴らしかった。名優を迎えて、これまでの作風を押さえて極めてストイックに制作したポール・トーマス・アンダーソン監督もいい仕事をした。セリフや状況説明は可能な限り削られ、共感しやすい愛すべきボンクラキャラも登場しない。レディオヘッドのジョニーが担当した音楽は最初から最後まで「この映画では(標準的な考えでの)いいことは起きませんよ」と訴えてるようにしか聴こえなかった。

映画としてはとてもよくできているし、嫌いではないんだけど...、ちょっとマジメすぎないか?(Why so serious?) エンド・ロールに現れる「ロバート・アルトマンに捧ぐ」と出たことも要因かなーと思うけど。映画として傑作と思うけど、好きかどうかと問われると「ブギー・ナイツ」の方が好きかなー。だってPTAってまだ38歳なんだよ(私より年下)!この後どうするんだろ?ってちょっと心配になった(レオス・カラックスみたいに何年も映画作れなくなったらやだなぁ)。こういうのはジジイになってから撮ろうよ。

ソフトに関しては本編同様ストイック。特典は「15ミニッツ」という資料集(当時の石油屋たちや風景の写真等)と、いくつかの未公開シーン(日本語字幕付)、「石油の物語」という当時のドキュメンタリーのみ。監督の音声解説とか聞きたかったなー。