映画&絵本「かいじゅうたちのいるところ」について

- 作者: モーリス・センダック,じんぐうてるお,Maurice Sendak
- 出版社/メーカー: 冨山房
- 発売日: 1975/12/05
- メディア: 大型本
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主人公のマックスは、オオカミの着ぐるみを着てやったいたずらの罰に、夕食ぬきで寝室へ追いやられる。ところがびっくり、部屋はいつの間にか森になり、マックスはそこで思う存分あばれ、遊びはじめる…。
「かいじゅうたちのいるところ」(原題「Where The Wild Things Are」)の映画版をスパイク・ジョーンズが監督するという噂自体は随分以前に聞いたっきり忘れてたんだけど、id:Dirk_Digglerさんのブクマでこの記事を見つけた。
モーリス・センダックの世界中で愛されているベストセラーの絵本「かいじゅうたちのいるところ」を、「マルコヴィッチの穴」(1999年)、「アダプテーション」(2002年)などカルト系の変な映画を作る監督スパイク・ジョーンズを起用し、家族向け娯楽映画のファミリー・ピクチャーに仕上げようなどという、そもそもが土台、無理なプロジェクトをスタートした結果、案の定、出来てきた映画(↑写真)が、ダークすぎる、難解でわからない、主人公の少年の家庭環境の不幸ぶりがリアルすぎて、ひいてしまう、ファンタジーなはずのかいじゅうたちが怖すぎて子どもが泣く…といった結果(噂)で、同映画を転覆させてしまったワーナー・ブラザースが、初めて公式にロサンゼルス・タイムズの取材に答え、スタジオの責任者のアラン・ホーン氏が、監督・キャストを総入れ替えし、莫大な赤字覚悟で、ワーナー・ブラザースは「かいじゅうたちのいるところ」をイチから全部撮り直すというウワサを完全否定しました。
CIA☆こちら映画中央情報局です:スパイク・ジョーンズ監督のドツボの映画「かいじゅうたちのいるところ」について大損害のワーナー・ブラザースが公式見解を発表!! - 映画諜報部員のレアな映画情報・映画批評のブログです
こんな事態になっていたとは知らなかったのでびっくり。
さらにブクマコメントで映画のフッテージも発見し、見てみたらさらにびっくり。
Dailymotion-Where The Wild Things Are Video
↓ほぼ同内容のYouTube版。
これを見る限りですが、....大傑作じゃないですか!!!!
かいじゅうの可愛さ具合が異常!マックスのおおかみの着ぐるみも最高!かいじゅうたちを安易にCGにしなかっただけでも素晴らしい。
絵本自体は昔から好きだったんだけど、持ってはいなかったので早速購入し娘に読んであげた。すごく気に入った模様。そりゃそうだろう。特にかいじゅうたちが踊るシーンが好きだ。「かいじゅうおどりだ!すごい!」。
この絵本に対して、個人的には「かいじゅうが可愛い」という単純な印象のみが強かったんだけど、この絵本の持つ非凡な内容について解説されたサイトがあったので、一部抜粋。
この内容で、そこには母親の言うことを聞かなかった罰もなく、礼儀正しくすることの大切さや、学ぶべきものは見当たりません(すくなくとも、そのように見受けられます)。
(中略)
ところが、この本は子供たちはわぁわぁと喜びます。センダックの元には「どうやったらかいじゅうたちのいるところにいけますか?」という、手紙が届くそうです。そのくらい、子供たちには面白い絵本なのです。
(中略)
この絵本は、いわゆる"発達心理学”“絵本論”“子育て本”にも例としてよく出てきます。
くるくるの、絵本はたからもの かいじゅうたちのいるところ~ロージーのおさんぽ
その何冊かは、マックスの暴れっぷりを、健全な成長のための、健全な行動と捕らえています。この衝動を無理に抑えてしまうと、怒りを溜め込んだり、かんしゃくをおこしやすくなる、といったないようです(すいません、出典を忘れたので、確認できるまでこの部分は無視されても結構です。)
そうなんですよ。子どもは元々「かいじゅう」なんですよ。
時々保育園の同じクラスの男の子のお母さんが「(ウチの娘を見ながらしみじみと)女の子はいいですねぇ、男の子は...わけがわかりません」と半泣きで訴えてくることがある。普段は大人しい子が、何かが癇に障ってそばにあった椅子を投げつけるのを目撃したこともある(そばに居た彼のお母さんは途方に暮れた表情をしてた)。
そういう男の子の父親であったことはないのであまり安易なことは言いたくないけれど、それ自体はいたって健全なんじゃないかなーと思う。子どものこういう行動に対して育児ノイローゼになるお母さんもいるかもしれないけど、あんまり気にしなくていいんじゃないかなー。だって子どもは極めて飽きっぽい「かいじゅう」なのだから。
そしてスパイク・ジョーンズもまた子どもであり「かいじゅう」なのだと思う。
過去に何度も載せた事があるけど、改めてYEAH YEAH YEAHS「Y CONTROL」のPVをどうぞ(埋め込み禁止になってた)。
町山さんが「ゴスのセサミ・ストリート」と評したこのPV。良識的な大人が見たら怒り出しそうなこの「子ども&ダークなホラー」映像を見た時に「スパイク・ジョーンズは子どもが本当に好きなコトを分かってるなぁ」と思った。メイキングを見たわけじゃないけど、きっと出演した子ども達も楽しんだんだろう。誰がこの映画の監督にスパイク・ジョーンズを推薦したのか知らないけど素晴らしくナイス・チョイスだと思う。
悪い事は言わない。ワーナーはスパイク・ジョーンズのやりたいようにさせるべきだ。その結果、当初目論んでいたようなファミリー層に受ける映画にはならないかもしれないけど、本当に子どもが見て楽しめる映画ができるハズだ(R指定になるかもしれないけど)。そんな傑作が生まれるための邪魔だけはして欲しくない。「パンズ・ラビリンス」に負けない「本当の」ファンタジー映画になるハズだ。
オマケ
スパイク・ジョーンズ監督の「GAP」のCM。これも極めて「子ども(かいじゅう)的発想」だと思う。