「WALL・E」を観る前に観るべき映画その2-「サイレント・ランニング」

植物学者のフリーマン・ローウェル(ブルース・ダーン)は、宇宙船バレーフォージ号で3年間を過ごしていた。宇宙船内に作られた巨大なドームで、地球上に唯一残された植物の標本を栽培するという任務を負っていたのだ。だが、植物ごとドームを破壊して帰還するよう命じられたため、ローウェルは組織をあざむいて宇宙船をハイジャック!!自ら負傷しながらも、仲間の宇宙飛行士たちを殺してしまう。そして、土星の外輪へと向かう宇宙船に2体のロボット、ヒューイとデューイと共に1人残るのだった・・・。


たった1人(台)でゴミを片付け続けるWALL・Eを見て、「サイレント・ランニング」のラストシーン「1人(台)残ったロボットが植物に水をあげる」を思い出した方もいるでしょう。


じょうろの柄がかわいい。


72年に作られたこの映画、レビューを読むと「早過ぎた傑作」として評価される方が多いんですが、私は噂しか聞いたことなかったので今回レンタルで初めて見ました。


主人公フリーマンは「地球に残された数少ない植物を守ろうとするエコの人」で、植物に興味のない同僚に対して、いかに植物が大切かを力説するのですが、目がイっちゃっててはっきり言って怖いです。言ってる事は正論だし、無神経な同僚も勘にさわるところはありますが、だからって殺すことはないだろう...。1人はスコップか何かで撲殺、残りはドームごと核爆発(!)。動物愛護ヤクザ(©Weekly Teinou 蜂 Woman)のPETA以上に過激な主人公にまずは唖然。

この「同僚を殺害し地球との連絡を切る」あたりが映画の中で一番緊迫するシーンですが、この時点で30分経ってません。ここからはフリーマンと3台のロボット(1台はすぐに居なくなり2台になる)が、宇宙船の中でダラダラ過ごすシーンが延々続くのですが、時間配分間違ったとしか思えない。

その後、そうまでして守った植物が枯れ始めたりして(この原因と対処がまたひどい)、最終的には植物のドームにロボットを1台残してフリーマンは宇宙船ごと自爆します(勝手過ぎる...)。そしてあの印象的な「植物に水をあげる」ラストシーンとなるのですが、ストーリーはともかくこのロボットの愛らしさこそがこの映画の最大のポイントといえます。



「いいかー、水はこうやってあげるんだぞ」


3台のロボット(劇中では「ドローン」と言われてる)は元々名無しで「1号」「2号」「3号」でしかなかったのに、独りぼっちになったフリーマンが寂しさを紛らわせるために彼らに「ヒューイ」「デューイ」「ルーイ」という、ドナルド・ダックの甥っ子の名前をつけてポーカーを仕込んだりします(つか、お前が仲間殺したんじゃん!)。

ロボットを動かしているのは「ベトナム戦争で足を失った人」で、その結果動きが人間臭くなり可愛らしく見えるようになりました。これを見たジョージ・ルーカスR2-D2を思いついたと言われてます。

サイレント・ランニング」に登場する人間は皆愚かでお互いをののしったり殺し合ったりしますが、ロボット達は事故でいなくなってしまった仲間を心配するそぶりまで見せます。この人間臭いロボットというキャラクター設定は「スター・ウォーズ」を経て「WALL・E」に受け継がれているといえます。おそらく感情を持ったロボットと、堕落した人間との対比が描かれるのでしょう。

WALL・E」を観る前に観るべき映画シリーズはまだまだ続きます。


↓「サイレント・ランニング」予告編


(参考)
SF PaperCraftGallery-DUEY・HUEY・LUIE(ヒューイ達のペーパークラフト、じょうろもついてて超かわいい)

「WALL・E」を観る前に観るべき映画その1-「ハロー・ドーリー」