ラテンビート映画祭で『スガラムルディの魔女』『ビースト 獣の日』を観ました


ラテンビート映画祭でアレックス・デ・ラ・イグレシア監督の新作『スガラムルディの魔女』と、95年に公開された『ビースト 獣の日』を観ました。


まずは『ビースト 獣の日』の話から。


1995年12月24日。黙示録の研究に人生を費やしてきた司祭アンヘルは聖書を解読し、翌日マドリッドのどこかに生誕するはずの“反キリスト”抹殺を企てる。そのためには悪魔を降臨させる必要があると考え、自ら悪行を続けるアンヘルだったが、その中で悪魔を崇拝するヘビメタ・ショップの店主ホセ・マリアと出会う。意気投合した二人は、TVでオカルト・ショーのホストを務めるカヴァン博士に悪魔を呼び覚ます儀式を行わせる。そして儀式が終わると、実際に悪魔の化身とおぼしき黒山羊が出現した……。


本作は私が初めて観たイグレシア映画で、当時は「訳が分からないが何かスゴい!」と興奮したのですが、19年後に見直してもやっぱり同じ感想でしたw。神父さんが悪魔に出会う為に悪の限りを尽くす(といっても万引きとかみみっちい犯罪ばかり)という導入部分からバカバカしくて最高だし、悪魔を呼び出す儀式をするにあたって「処女の生き血」を採取するあたりのドタバタは抱腹絶倒の面白さ!


↓神父、ヘヴィメタラー、いんちきオカルトタレント3人組


上映後にはイグレシア監督が登壇しティーチインが行われました。日本に到着したばかりの監督が「質問があれば答えるけど、私からも質問させてくれ。マンガやフィギュアはどこに売ってるの?」といきなりオタク趣味を全開して爆笑(誰か中野ブロードウェイとか教えて上げたんだろうか?)。実は主役である神父役の方が先月交通事故で亡くなったそうで、日本でのこの熱狂を伝えてあげたかったなぁと残念に思いました。


※イグレシア監督のTwitterアカウント(@alexdelaIglesia)や、Instagramアカウント(@alexdelaiglesia)を見ると秋葉原とかまんだらけとかロボットレストランに行ってるようです。


その2日後に最新作の『スガラムルディの魔女』を鑑賞しました。


↓どこかの国のDVDジャケ。

イエス・キリストや兵士といった格好をし、コスプレ大道芸人に成り済ました5人組の強盗団は、白昼のマドリードで宝飾品店の襲撃に成功する。通りかかったタクシーの運転手を脅して逃走を企てた強盗団だが、追ってくるパトカーを巻こうとして道に迷ってしまい、かつて魔女が火あぶりにされたという伝説の残るスガラムルディの村にたどり着く。村には人間の肉を常食とし、人間社会の転覆を目論む魔女たちがおり、強盗団を追ってきた者たちも交え、魔女と人間の壮絶な戦いが始まる。


近作である『気狂いピエロの決闘』がとてもシリアスな内容だったのに対して、今回はコメディ寄りで終始楽しく鑑賞しました。オープニングの子連れコスプレ強盗シーンがとにかくサイコー!本作のテーマはシンプルで「マヌケな男達VS邪悪な女達」。監督もティーチインで「本作を観たらいかに女性が邪悪であるかが分かったと思います」と新婚の奥さん(カロリーナ・バング)を隣に従えて発言していました。これだけ聞くと女性差別か?とも思えますが、監督は以下のように語ってます。

「私は非常にフェミニスト。女性は悪意に満ちた存在だと思っていますが、男性はバカだと思っています。バカと悪を比べると、悪のほうがはるかにいい。女性は男性のあばら骨の1本ではないことを強調したい」と人生哲学を披露した。

スペインの鬼才・イグレシア監督、影響受けたのは「ゴジラ」「エイリアン」「めまい」 : 映画ニュース - 映画.com


「バカと悪を比べると、悪のほうがはるかにいい」というのはとてもイグレシア監督っぽいひねくれつつも無邪気な意見だなと思いました。


私はイグレシア映画は「まとまる事を拒否してる」ように強く感じています。当然ながら映画には「終わり」があります。ジグソーパズルのピースが徐々に埋まっていくように、謎が解けたり、目的地に近づいたり「まとまって」いきます。ところが彼の映画はかなり終盤になって「まとまってきたな」と思った途端に突然変な方向に進んでいき、「???」となる事がよくあります。まるでジグソーパズルが完成に近づいた頃に半分以上ひっくり返さるような感じです(いわゆる「どんでん返し」とは異なる)。その結果、ストーリーはグダグダになって訳が分からなくなる事がしばしば(毎回?)ありますが、この暴走は「このまま終わると思ったら大間違いだ!」という監督の必要以上に過剰なサービス精神である、と勝手に解釈しています。

何よりも影響を受けているのは「ロクな作品を作らない作家、あるいは退屈で死にそうなプログラムを作るディレクター」という。「私は日曜日にサッカーを見ますが、それは死ぬほど退屈なことなのに私をとらえて離さない。『いつもみんなを楽しませなければならない』という、良い強迫観念を与えてくれる」とユニークな視点でイマジネーションの源泉を語った。

スペインの鬼才・イグレシア監督、影響受けたのは「ゴジラ」「エイリアン」「めまい」 : 映画ニュース - 映画.com


↓『スガラムルディの魔女』より。こんなバカな絵面見た事無い!


普通は初期にヤンチャで型破りな作品を撮ってもキャリアを積んで行くうちに一般受けする大作とかを作ったりするモノですが(ピーター・ジャクソンとかサム・ライミとか)、イグレシア監督は『ビースト 獣の日』の頃から最新作に至るまで一貫して自身の過剰とも言えるスタイルを貫き、そしてさらに進化しているのです。敬意を持って「大人にならなかったピーター・ジャクソン」という称号を与えたいw。


先に書いたように、今回は監督の奥様で女優でもあるカロリーナ・バングさんもティーチインに同席されていました。『気狂いピエロの決闘』では気狂いピエロ2人に愛された妖艶な空中ブランコ乗りを演じてましたが、『スガラムルディの魔女』ではパンキッシュで色っぽい魔女を演じていてサイコーでした。


今後の予定ですが、10/24から始まるラテンビート映画祭<大阪>で『スガラムルディの魔女』『ビースト 獣の日』が上映されますし、11/22からは『スガラムルディの魔女』と、イグレシア監督の日本未公開作品『刺さった男』の一般上映(同日公開!)も始まるので、未見の方はぜひ!特に『ビースト 獣の日』はDVD化されてないので、これを逃すと観られるチャンスはあまりないです!超オススメ!



↓気軽にファンのサインに応じるイグレシア監督
https://instagram.com/p/t-Zc5Ag1kL/


↓イグレシア監督とカロリーナ・バングさんからサインいただきました!
https://instagram.com/p/uDDUeGg1v8/


↓カロリーナ・バングさんとワタクシ。幸せ!
https://instagram.com/p/uDD2jxg1gk/


ラテンビート映画祭2014

『スガラムルディの魔女』『刺さった男』オフィシャルサイト


※過去のイグレシア監督作品に関するエントリー
スペインの悲しき歴史と壮絶な三角関係 - 『The Last Circus』(『気狂いピエロの決闘』)

アレックス・デ・ラ・イグレシア監督作品DVDまとめ


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