ダメ、ゼッタイ - 『WHO KILLED NANCY』

1978年10月、ニューヨークのチェルシー・ホテル100号室でセックス・ピストルズシド・ヴィシャスの恋人、ナンシー・スパンゲンの刺殺体が発見された。同じ部屋にいたシドが容疑者として逮捕されるが、事件の全容が解明する前に薬物の過剰摂取で急死。シド研究の第一人者アラン・G・パーカーの長年にわたる調査を基に、今もさまざまな憶測を呼ぶ事件の真相に迫る。


WOWOWで放送されたシド&ナンシーのドキュメンタリー『WHO KILLED NANCY』を観ました。タイトル通り、この映画は「誰がナンシーを殺したのか?」つまり「シドはナンシーを殺していない」ということを訴える作りになっているのですが、結果的にシドとナンシーの2人のイヤな部分を見せつけられた感じがしました。


シド・ヴィシャスといえば、そのルックスや数多くの武勇伝から「いかにも悪そうな人」という印象がありますが、逆にそのせいで「でも実際は繊細で純粋な子だったんだよ、きっと」と思われている部分があると思います(「さよなら絶望先生」の三珠真夜ちゃんみたいな存在)。


実際にはそういう所だってあったのかもしれませんが、「シドが意味もなく猫を殺して捨てていた」というエピソードを聞いてドン引きしました。そういえばシドの代表曲『My Way』の歌詞でも「オレは猫を殺した」って言ってるんですよね。

To think, I killed a cat
And may I say, not in a gay way
Oh no, oh no not me
I did it my way



ただ、シドがナンシーを殺したかどうか?というのは確かに曖昧な部分が多そうです。ナンシーを刺したナイフは指紋を拭き取った状態で部屋に置かれていたそうですが、その部屋にはシド以外にも多くの人が出入りしており、シド自身はドラッグで完全にぶっ飛んでいてナイフを持つ事すらできない状態だった、と証言している目撃者が多数いたようです(ひどい理由だ)。またナンシーが持っていた大金も同時に消えていて行方知れずになっており、第三者が殺して逃げた可能性は否定できないようですが、結局容疑者シドの死亡で捜査は打ち切りになったようです。


息子にドラッグを買い与えるようなダメな母親に育てられたシドと、誰からも嫌われていたナンシーという若いカップル(シドは21歳、ナンシーは20歳!)を、崇高な「純愛」として捉えたくなる気持ちは分からなくもないですが、現実はそんなに単純ではなかったようです。



ドラッグと死にまつわるドキュメンタリーでありながら、映像はポップでスタイリッシュです。しかし『イグジット・スルー・ザ・ギフトショップ』のMBWっぽいフェイク感満タンの映像なのでちょっと興ざめでした。


出演者にグレン・マトロックやドン・レッツなんかがいますが、ジョン・ライドンはいません。また監督はアラン・パーカーですが、『ミッドナイト・エクスプレス』とかの監督ではなく同姓同名なのでお間違いなく。


中にはポール・ウェラーに難癖つけたシドが逆にボコボコにされたというちょっと笑えるエピソードもありはしましたが、よっぽどピストルズに思い入れがある人以外には向いてないと思います。


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