想像力を刺激せよ - 『女優霊』VS『THE JOYUREI 女優霊』

新人監督の村井俊男は、カメラテストの映像にまったく別な女優が写っていることに気がついた。それから奇妙なことが次々に起こり始めて……。映画の撮影現場を舞台にした正統派ホラーの力作。

「リング」中田秀夫監督のデビュー作「女優霊」を「メイド・イン・ホンコン」「ドリアン ドリアン」のフルーツ・チャン監督で英語リメイク。撮影スタジオを舞台に、古い映画のフィルムに宿る悪霊によって現場スタッフに次々と悲劇が降りかかるさまを描く。幻覚に悩まされ、スランプ中の映画監督マーカスに、新作映画のオファーが舞い込む。さっそく、ドラキュラ伝説の地、トランシルバニアの古い撮影スタジオへとやって来たマーカス。しかし、撮影は当初から不可解なトラブルに次々と見舞われ、難航してしまう。


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シアターNで 『女優霊』と、そのハリウッドリメイクになる『THE JOYUREI 女優霊』の2本立てを観ました。


私はスプラッターとか暴力描写は不感症なんで全然平気なんですが、いわゆる「心霊モノ」は超苦手で、最近話題になった『パラノーラルなんとか』というのも未見だったりします(理由「怖そうだから」)。そんなわけで『女優霊』も「もの凄く怖い」という噂だけは聞いていたので、ずっと敬遠していたのでした(最近までDVD化されていなかったという事情もある)。


今回はリメイク版との2本立てで料金も¥1,500とお得だったので、こういう機会でもないと一生観ないかもと思い一念発起し観に行きました。


まずはオリジナル版の『女優霊』。当初かなりビビってましたが、結果的にそんなに「怖い!」とは思いませんでした。「怖い」というか、映画における「怖さ」というものを解説している講義を受けてるみたいな印象で、「そうか、こうやると怖くなるんだ」とか妙に感心しながら冷静に観てしまいました。


抽象的な言い方になるけど、「怖い話」とか「怖い映像」じゃなくて、「怖い空気」を構築してる感じなんですよね。「匂い」とか「雰囲気」でもいい。「古い撮影スタジオ」「ぼんやりした影」「記憶にあるのに誰も知らない映画」といった「何となくイヤな感じ」を幾層も重ねて恐怖感を出すことだけを追求してるというか。


またストーリー上の謎が結構残るんだけど、そのさじ加減が絶妙で、何となく分かりそうで分からない。「本当はまっすぐな線が曲がって見える」みたいな錯覚パズルがあるけど、そんな感じ。隠れた部分、分からない部分を脳が勝手に補完しようとした結果、本来のものとは異なる何かが見えてくる、そんな感じ。だから想像力が豊かな人には凄く怖いんじゃないかなーと思いました(逆にいえば自分は想像力ないということか...)。


対してリメイク版。これがオリジナル版の一見地味でシンプルな作風をまったく無視した、がんがん人が死ぬフツーのホラー映画でした。同じなのはフィルムに昔の映画が映り込むのと、高い所から落ちて足が変な方を向いて死んじゃうとこくらい。


そもそも「時々幻覚を見る頭がおかしい映画監督が主人公」なんてエキセントリックな設定、普通ないから!そんな異常な状況で幽霊が出ても怖くないから!


例えるならば、一切余計なものを入れずに作った日本酒に、ケチャップとマスタードとついでにチョコレートムースをぶちまけてドヤ顔で出されたような、そんな感じでした。オリジナル版への敬意まったくなし!多分監督はオリジナル版をそんなに好きでもないんだろうね。あーあ。


(その他)
・『E.T』のエリオット役のヘンリー・トーマスや、『ホステル』のイーライ・ロスとかが出演してます。


女優霊 [DVD]

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