読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

子供の目を通して見た世界 - 『リトル・ランボーズ』

MOVIE

1982年イギリス、厳格な家庭に生まれ育った11歳のウィル(ビル・ミルナー)はあらゆる娯楽を禁じられていた。そんなある日、彼は学校一の問題児カーター(ウィル・ポールター)と出会い、彼の家で生まれて初めて観た映画『ランボー』のとりこに。「こんな映画を作りたい」という気持ちで結ばれた二人は、見よう見まねで始めた映画作りを通して友情を深めていくが……。


オフィシャルサイト


前回(Hammer & Tongs)の続き。


本題『リトル・ランボーズ』の感想に入る前に、もう一度Hammer & Tongsの話。彼らが数年前に作った『The Pool Cleaner』という短編映画がある。


↓The Pool Cleaner


内容はプール掃除人のガース・ジェニングス監督がひたすら「ジョン・ボン・ジョヴィ」の偉大さについて興奮して語りまくるというただそれだけ(字幕ないから詳しくは分からないんだけどそういう内容だよね?)。


ホントのところはよく分からないんだけど、彼は本当にボン・ジョヴィが好きだったんだと思う。そして彼が憧れた80年代のヒーローはもう1人いて、それが『ランボー』ことシルベスター・スタローン。実際彼は少年時代に『ランボー』の海賊版ビデオを見て夢中になり、それを模倣した映像を仲間で作ったことがあるらしい。


その時の経験を元に作られたのが、今回の『リトル・ランボーズ』。


当初は『ランボー』ではなく架空の映画として登場させるつもりが、「やっぱり『ランボー』でないとダメだ」と思い直したガース監督。改めて憧れの人、スタローンに映像を使用する許可を求める手紙を出し、無事スタローン自身から快諾の返事をもらったらしい(いい話だな)。


宗教上の理由(「プリマス同胞教」というアーミッシュのような厳格な宗派)であらゆる娯楽を禁じられた大人しい少年ウィルが、内に秘めた様々な想いを「落書き」という形で自身の聖書や、学校のトイレの壁に吐き出すという導入部分だけでもうノックアウト。そんな彼が、ふとしたことから生まれて始めて「映画」を見る。もちろん『ランボー』だ。父のいない彼は偉大なランボーを父ととらえ、自分は「ランボーの息子だ!」と主張するようになる。そして内緒で描く落書きでしか自己表現できなかった彼は、映画を作るというクリエイティブな作業に夢中になる。


↓ウィルの落書き。この絵だけでご飯何杯でもいける!


そんなウィルと共に映画を作るのがカーター。彼はウィルとはまったく対照的な学校一の悪ガキなんだけど『ランボー』を通じて彼らは意気投合し、撮影を進めるごとに親友になっていく。とにかくこの2人の演技や表情がいちいち素晴らしくってそれだけで胸がいっぱいになる。


↓ウィル&カーター。いい顔!


もちろんこの後予想外の出来事が起きて友情にヒビが入ったり、映画の完成が危ぶまれたり、家族にバレたりとかあるけれど、これは実際に映画を観て欲しい。


ガース監督の少年時代の経験が元になっていると書いたが、この映画にはあまりリアリティがない。これは「子供の目を通して見た世界」を意図的に表現しているからで、子供の妄想や誤解、思い込みをそのまま映像にしてる。


それが如実に現れてるのがコモンルームのシーン。UKの学校にはコモンルームという娯楽室があって、ここには6年生しか入ることは許されず、教師ですら入れないらしい。映画でウィルは本来は入れないコモンルームに招待され、そこでこれまで聴くことのなかったポップミュージックやダンス、ファッションといった「イケてる」カルチャーの洗礼を受け、それらのトリコになるのだが、これはガース監督や相棒ニックが5年生の時に「妄想」した世界。実際に6年生になってコモンルームに入った時にはそんなものはまったくなくがっかりしたそうだ。


↓これがその「妄想」のコモンルーム。こんな小学生がいるか!


 


とはいえ、このシーンはガース監督(72年生まれ)とほぼ同世代の私からすると、「いかがわしい80年代」の魅力に溢れていて非常に楽しめた。当時自分は日本の西の端に住んでいたんで、岡崎京子東京ガールズブラボー』のサカエよろしく、「東京の人は皆オシャレでかっこいいんだろうなぁ」と妄想していたことまで思い出した(実際に訪れたときのショックもな)。


主人公の2人の関係をずっと観ていたい気持ちが強くて、フランスからの留学生を絡ませるのが少々邪魔な気もしたけれど、概ね満足。単なる悪ガキだと思われたカーターの内面に触れるシーンでボロボロ泣いてしまったよ。『ランボー』を観て感動したガースが成長し、『リトル・ランボーズ』を作るという恩返しのようなリスペクト精神にも感動。『かいじゅうたちのいるところ』に続く、「小学生映画日記」推薦映画として強く強くオススメ。渋谷では明日までですが、地方はこれから順次公開みたいなのでお楽しみに。


↓『リトル・ランボーズ』予告編


追伸
この映画ってPG-12なんで、エロいシーンでもあるのかと思ったらまったく無かった。ひょっとして子供がタバコ吸ったり、万引きしたり、「映画泥棒」するシーンがあるから?何だかなー。


Son of Rambow

Son of Rambow