読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

「負の自分」を認めろ - 『映画ハートキャッチプリキュア!花の都でファッションショー…ですか!?』

ファッションショーに出るために、モデルとしてフランス・パリにやって来たつぼみたち。しかし、パリでは満月の夜に狼男が出現するという、不気味なうわさが広まっていた。そんな中つぼみたちは、空から舞い降りて来た傷だらけの少年、オリヴィエと出会う。さらには、デザトリアンがパリにまで現れ……。


オフィシャルサイト


娘と観に行きました。過去に観た『プリキュア』映画はどれも、とにかく悪い人が出てきて最後はプリキュアが勝つという至極おおざっぱなモノで、対象年齢を考えるとそれもやむなしかと思っていたら、今回はお話が非常に深く、大人の鑑賞に堪えうる内容でした。


今回の敵役であるサラマンダー男爵と、その連れであるルー・ガルー(フランス語で人狼全般を指す言葉)の関係が超微妙なんですよ。サラマンダーは400年前に初代プリキュアであるキュア・アンジェに倒され何かしら牢獄のような場所に閉じ込められていた。その間に元々の目的である「星の砂漠化」はどーでも良くなって、やられた仕返しに「こんな世界ぶっ壊してやんよ」というルサンチマンの固まりになってしまった模様。クールな外見だけど、根は陰険な男爵でした。



↓ルー・ガルー(オリヴィエ)


その連れであるルー・ガルーは(説明が一切ないのでよく分からないが)サラマンダーが閉じ込められた監獄を開く力を持っていたらしく、状況も分からないまま明確な意図もなくサラマンダーを解放する。400年の孤独がそうさせたのか、サラマンダーはルー・ガルーを殺すことなく失われた力を取り戻すための「旅の仲間」にし、両親がいなかった(のかな?ここも解説なし)ルー・ガルーもそんなサラマンダーを「父」として慕い、共に旅をすることにする(ちなみにルー・ガルーはサラマンダーがつけた呼び名で本名は最後まで分からず)。


旅の過程で、サラマンダーはルー・ガルーに狼男となる力を与えるのだが、ここも説明がなくよく分からない。想像するに、連れを「異形の存在」にすることで、自分と同じように「自分を受け入れない世界への憎悪を植え付けようとした」のかもしれないし、過酷な旅の中で「力を欲した」ルー・ガルーに良かれと思い力を与えたのかもしれない。


いよいよ世界を滅亡させる力を手にしたサラマンダーだったが、ルー・ガルーは土壇場で躊躇する。父を慕っているが、世界を破滅させる必要があるのか悩む彼は、サラマンダーの力の源である石を盗み、その途中でたまたまパリに来ていたつぼみ達と出会う。映画はこの場面から始まり、それまでの行程はざっくりしたイメージカットと簡単な説明のみで表現される。なので、はっきり言って分かりにくい。小学生とかはほとんど理解できなかったんじゃなかろうか?



今期のプリキュアの特長といえるのが、プリキュアそれぞれが大なり小なりの悩みやトラウマを抱えており、それらを無かったことにして自分を変えるのではなく、そういう「負の自分」もまた自分と認めた上で変わろうとしていく、乗り越えようとする傾向がある。また過去にキュア・ムーンライトのパートナーである妖精が「死んでいる」ことについても(少なくとも現時点では)安易な復活などせず、極めてドライに描かれたりと「暗い」演出が見え隠れする。


ルー・ガルーを保護し「オリヴィエ」(フランス語で金木犀のこと)という新しい名を与えたつぼみ達4人は、彼を単純に励ますのではなく、それぞれが自身の悩みを打ち明けた上で彼の力になろうとする。おそらく、これまでの旅の過程で他人と接することが少なかった彼は「異形の自分でも無条件に受け入れてくれる人だっている」ことに気がつき、あえてつぼみ達と別れ、改めて自らサラマンダーと対決する決意をする。しかしそれは愛する父を倒すことでもあった。


そして、それぞれの思惑を胸にラストはプリキュア(&コッペ様!)、オリヴィエ(ルー・ガルー)、サラマンダーの三つ巴の戦いとなるわけです(世界遺産モンサンミッシェルを破壊する!)。これが単純に「悪いヤツやっつけたぜ!イエー!」ではなく非常に見応えがありました。


個人的には驚きつつ非常に楽しめましたが、トータル的に考えるとやはり対象年齢の子ども(大きなお友達は除く)には「難し過ぎる」と言わざるをえず、それに対する批判が多いのも事実です(Yahoo!映画参照)。しかし子供向けという固定概念を取っ払って観る上では非常に良くできた作品だと思います。75分では収まりきれない内容なので、90分再編集版とか観てみたい。オススメです。


(その他)
・実は小二の娘はそこまでプリキュアが好きではなく「おとうさんが行きたがってるから行ってもいいよ」と言われました。すんません...。「内容難しくなかった?」と聞いても「そんなことないよ。面白かった」と言ってました。
・まさかのコッペ様登場には「おおっ!」と思いました。素敵!絶望先生!(違う)
・「パリの人はみんな優しい」というつぼみのセリフに、過去にパリでお金を盗まれた苦い経験を持つ私は「んなこたぁ、ねえよ!」と全力で叫びたくなったのは内緒。
ダークプリキュアも大画面で観たかったなー。TV版の最終回は映画で、とかやってくんないかな。


(参考)
『映画 ハートキャッチプリキュア! 花の都でファッションショー・・・ですか!?』 すきなものだけでいいです

映画ハートキャッチプリキュア! 花の都でファッションショー…ですか!? | 映画感想 * FRAGILE

(追記)
ちょっとでも迷ってるなら「ハートキャッチプリキュア!」の映画はスクリーンで思い切って見に行ったほうがいいよ、大人のみんな! - たまごまごごはん