無垢な愛は世界を蝕む- 『ぼくのエリ 200歳の少女』

ストックホルム郊外で母親と暮らす12歳のオスカー(カーレ・ヘーデブラント)は、学校で同級生にいじめられていた。ある晩、彼はアパートの隣の部屋に引っ越して来たエリ(リーナ・レアンデション)という少女と出会う。同じころ、近くの街では青年が逆さづりにされてノドを切り裂かれ、血を抜き取られるという残忍な殺人事件が起きる。


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以前から話題になっていた 『ぼくのエリ 200歳の少女』を観ました。前評判を聞く限り、「北欧」「少年&少女」「せつないホラー」と好きそうなキーワードがたくさんあって超期待して観ましたが、その期待が大き過ぎたせいかちょっと意に添わない部分もありました。


私が良くないと思ったのが音楽。ストリングスを効かせた叙情的な音楽が全編通して流れるんだけど、あれがどうにも邪魔。「ここぞ!」という時に効果的に使ってくれるといいんだけど、どうにも癇に障ってしまいダメでした。


あと、真魚八重子さんも確か書かれていたけど、少年の裸のシーンが多いのがちょっと生理的にダメ。この辺は観る人によっては気にならないかもしれません。


逆に言うと、それ以外はすっごく良かった!全体的には「説明を極端に省く」演出で、多少分かりにくかったりする面はあるけど、それも含めて良かった。オスカーとエリ、それぞれの孤独がすごくよく表現できていたと思う。


ただ、その演出のせいで分かりにくい(というか分からない)ものが2つあって、1つは「エリと行動を共にする謎のおじさん」の正体、もう1つは、これは監督の意図ではないけれど、あるシーンで出て来る「ぼかし」。


どちらも劇場で観た時は???だったのが、先日の「ウィークエンド・シャッフル」で宇多丸さんの解説を聞いて、ようやくすっきり!そうすると意味深だったエリの発言「私は女の子じゃない」や行動の1つ1つが一気に意味を帯びてやっと全体像が見えました。これを分かるか分からないかで映画の印象はかなり変わってくると思いますので、すでに映画を観てよく分からなかった方はこのポッドキャストを聞かれることをオススメします。


そういえば宇多丸さんは「『わたしは真悟』を思い出した」とも言ってて、この発言も膝ポン。悟とまりんと同じようにオスカーとエリの無垢な愛が、それゆえに世界を蝕んでいくようで興奮しました。


あの希望に満ちてるようにも見えるし、絶望の入り口にいるようにも見えるラストも良かったし、プールのシーンも良かった。何だやっぱりこの映画面白いじゃん。オススメ!


MORSE〈上〉―モールス (ハヤカワ文庫NV)

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