美女が出ればそれでいいんじゃない?-『Dr.パルナサスの鏡』

鏡で人々を別世界に誘う見せものが売りの、パルナサス博士(クリストファー・プラマー)の移動式劇場はロンドンで大盛況だった。観客は博士の不思議な力で自分が思い描く、めくるめく世界を体験できるのだが、そこにはある秘密があった。トニー(ヒース・レジャー)はそのアシスタントとして観客を鏡の世界へと導く役目を担っていたが……。


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一応書いておくとテリー・ギリアムのファンだ。古くはモンティ・パイソンのシュールな切り貼りアニメに魅了されたし、『バンデットQ』から『未来世紀ブラジル』、『バロン』の流れも大好きだ。最近だと評価の分かれた『ローズ・イン・タイドランド』だって(以前程じゃないけど)気に入ってる。


だけど、どーも本作はあまり楽しめなかった。好きな部分は色々あって、一座の馬車のデザインとか動く様は最高だし、トム・ウェイツ演じる悪魔がコスプレ姿のおっさんにしか見えないところもいい。超絶美女や小人が登場し、頭がはずれるシーンなんかは『バロン』等過去のギリアム作品でもおなじみのモチーフだし、鏡の中での警官ミュージカル?なんてモンティ・パイソンそのままで楽しかった。


何が楽しめなかったかというと、「ストーリーや展開がすごく分かりづらい」こと。別に辻褄が合わなくても楽しい映画はあるし、そんなにこだわってるつもりはないけれど、途中でダレダレになっちゃった。「イマジネーション」の映画を分かりにくいと書くと「お前の想像力が乏しいんだよ」と言われそうだし、それを否定はしないけど、どーにも腑に落ちない場面が多かった。


↓ギリアムのインタビューより

確かに『アバター』の映像は美しいが、ストーリーは目新しくないし、想像力を刺激されない。物語に入り込む余地がないんだ。私ならすべてを説明しないで、観客を迷路に誘い込むさ。

『Dr.パルナサスの鏡』が描く奇想天外ワールド | シネマ&ドラマ | 最新記事 | ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト


あー、その通りだよ。迷路に迷っちゃったよ。


分かりづらい件の例をあげると、「物語を紡いで世界の秩序を守る」ことと、「鏡の世界で欲望の世界を具現化する」ことの結びつきがまず分からない。全然違うような気がするんだけど。あと、ギャング達が鏡の中で選択を求められて「故郷のお母ちゃん(だっけ?)」を選択したら、悪魔の勝ちになる、てのもよく分からない。誰かマジで教えてくれ。


あと、ヒース・レジャーが持っていたパイプ。自分はアレには特別な意味があるに違いないと思いこんでいたんだけど、どーやら単に「首くくっても死なない」トリックでしかなかったようなので拍子抜け。つかあんなモン飲んだって死ぬでしょ、フツー。


多くの方が絶賛する故ヒース・レジャーの演技も正直心に響くものはなかったし(『ダークナイト』はそりゃ凄かったよ)、ジョニデ他の友情出演やギャラを孤児に寄付という話も「イイハナシダナー」とは思うけど、それ以上の感動はない。鏡の中のCG映像も、たまたま同じ日に観た『ラブリー・ボーン』の方が上手だった。


てな感じに好きな監督だからこそ、テメェの想像力や把握力を棚に上げてグダグダ書いたけど、実はそれらを帳消しにするくらい素晴らしかったものがある。それがヴァレンティナを演じたリリー・コールだ。


ギリアムは自作にあまり演技経験のない超絶な美女をキャスティングすることが多い。『バロン』(1989)ではヴィーナス役にユマ・サーマン、さらに準主役のサリーはサラ・ポリーだった。『ローズ・イン・タイドランド』の主役ローズ役のジョデル・フェルランドも超美少女だった。


↓一糸まとわぬユマ・サーマン姐さん。


↓その筋の人にはたまらないジョデル・フェルランドたん。


で、今回はスーパーモデルのリリー・コール。とことんこういうコケティッシュな顔立ちが好きなのね。分かるぞぉ、分かるぞぉ。


1番上に貼った日本のポスターだと、「ヒースとその仲間達」を前面に出してるけど、海外のポスターってこんなだよ。(ヨネログで知りました)



うぎゃー、最高!!!!


何つーか、この映画って結局悪魔も含めて全員がヴァレンティナに振り回される話、って考えた方が実は自然なんじゃねーの?もっともらしく不老不死が幸せか?とかどーでもよくね?最終的にヴァレンティナが幸せになったのならば、この映画はハッピー・エンドってことで。


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