PIXAR版『グラン・トリノ』-『カールじいさんの空飛ぶ家』
いつか世界を旅して回りたいと思っていたカールも、今や78歳。最愛の妻は亡くなってしまい、夢をかなえるには年を取り過ぎている。しかし、何と数千の風船を家に結びつけ、空高く飛び立つことに成功。カールは8歳の少年ラッセルとともに冒険の旅へと出発する。
市橋某は金持ちのボンボンで苦労を知らない男だったと聞く。そんな男が裸足で警察から逃げて整形を繰り返し、最終的には捕まったとはいえ2年以上逃亡したという事実を聞いた時に思ったのは「人間死ぬ気になれば何でもできる」だった。
で、『カールじいさん』。妻に先立たれた意固地で孤独な老人が、近所の少年との出会いがきっかけとなり心を開くようになり〜というプロットはまんま『グラン・トリノ』と同じ。そんなカールじいさんは何の為に風船で飛んだのかを考えてみる。表向きは「死んだ妻との約束を果たすため」ではあるが、実際のところは約束を果たした上で死ぬつもりだったのだろう。帰りの風船は用意されてなかったし。
モノ(=妻と過ごした家)に執着し続けたじいさんはあるきっかけでそれをやめる。そして死ぬつもりだったのにたまたま出会った少年を救うために奮闘することになる。なぜか?少年に「希望」を見たからだ。イーストウッドも家や車というモノに執着し続けた後に、最終的に少年にそれらを託すことになる。これも『グラン・トリノ』と共通している。
すべてを失った上で「死ぬ気になった」者はとてつもなく強い。杖がなければロクに歩けなかったじいさんが、最後はとんでもない場所で大活躍することになる。じいさんすげーよ!かっこいいよ!
正直言って過去のPIXAR作品と比べて、中盤以降の展開は雑な気がするし悪役の魅力も乏しい。それでも観終わった後に「ええモン観させてもらいました」と素直に思える映画にはなっている。ドン詰まりで生きている希望を失いかけている人にオススメ。
(その他)
・今回は3D字幕版を観ましたが特に字幕に対する違和感はなかった。やればできんじゃん!『ファイナル・デッドサーキット3D』も字幕で再上映して欲しい。
・子ども時代のエリーが激かわいい。惚れる。声優は監督の娘であるエリザベス・ドクター。
・オープニングに流した涙の量は2リットルくらいかな。泣き殺す気かっ!
・ダグ以外の犬が妙にリアルなのがちょっとチグハグしてた。カールじいさんの味方になった理由が曖昧だったのもマイナス。
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