平山夢明「枷(コード)」が「マーターズ」に似ている件

ミサイルマン―平山夢明短編集

ミサイルマン―平山夢明短編集


図書館で借りた平山夢明の短編集「ミサイルマン」に収録されている「枷(コード)」が先日観た「マーターズ」ととてもよく似たテーマを扱っていたので紹介。

「枷(コード)」「マーターズ」のネタバレを含むので、ここで畳みます。





「枷(コード)」のあらすじはざっとこんな感じ。


拷問を受け死にかかった男が逆に女を殺す。その時男は「死を覚悟してそれを受け入れた女性が死の間際に不思議な力を出す」ことに気がつく。男はそれを「顕現(けんげん)」と呼ぶがその内容は「電球を破壊する」「壁の煉瓦を飛ばす」「服に火をつける」等人によって様々だった。男はその「顕現」が起こした品物を収集することに取り憑かれて拷問と殺人を繰り返す。

顕現とは......まるで<生命>というチップを使って神が胴元の賭けに参加するようなものだとも感じた。自分と生け贄になるものが見事に渾然一体化した瞬間に顕現は生まれるものだという確信があった。
「枷(コード)」より


目的は違うが「マーターズ」に登場する謎の秘密結社も同じく若い女性に拷問を与え続け、被験者が全ての苦痛を受け入れて覚醒することで「殉教者」となり死後の世界を覗くことができると考えていた。「マーターズ」ではなぜ「若い女性にそれが可能か」は説明されなかったが、「枷(コード)」では次のように語られている。

あなたは全ての人間、少なくともある種の若い女性にはすべからくあの力は備わっているべきものだと白い天井を眺め、白衣の看護婦の手当を受けるなかで看破した。
生命力溢れる女には全てある電気的な源流。故に命の発電機として己が子宮に宿った細胞に<精神>を注入するエネルギーをみな持っているのだ......。
「枷(コード)」より


「子宮を持つ女性が神秘的な力を持っている」というのは私が男のせいもあってか、妙に納得させられました。


これらはもちろんパクリとかそういう次元の話ではなくて、同じ様なことを考える人が世の中にはいるんだなぁと感心したのと同時にこの映画とこの小説を同時期に見たり読んだりする自分のシンクロ力にも驚かされました。オレ、スゲー。


加えてこの小説のイヤ〜なトコロは男が「二人称」で語られること。つまり、

あなたは女の上に馬乗りになると今度こそ思い切り首を絞め始めた。
「枷(コード)」より


こんな感じで進んで行くのだ。これはかなり辛い。


そしてラスト、男はある理由で「最愛の人」を拷問することになる。その理由と結果は、読んでからのお楽しみ。このラストはかなり衝撃的で私は「マーターズ」よりも気に入りました。


他の短編も面白いけど「グロ描写」に耐性のある方のみにオススメします。



(関連)
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