お母さん、僕はどうして生まれて来たの?-「エイリアン4」

前作でエイリアンを宿したまま自殺を図ったリプリー。それから200年後、エイリアンを軍事利用しようとする軍部は、宇宙船に残されたDNAからリプリーのクローンを開発。彼女の体からエイリアンを摘出し、養殖をはじめる。


スターチャンネルHVで「エイリアン4」を見ました。


「エイリアン・シリーズでどれが好き?」という質問があったなら、おそらくは「2」と「1」がトップ争いをして、「3」と「4」がビリ争いをすると思う。だけど私はジャン=ピエール・ジュネが監督した「4」がすごーく好きだ。毎回ラストで泣いてしまう。


確かに「3」で死んだリプリーをクローンとして復活、というプロットはおかしい。仮にそんなことができたとしても、リプリー自身はともかく、異物であるエイリアンは復活しないだろう。でもまぁ、とりあえずここは目をつぶることに。


「4」での最初の見せ場はリプリーのクローン1〜7が登場するシーンだ。






人間とエイリアンが組合わさった7体の怪物(失敗作)たち。このシーンで登場するプロップは恐ろしいくらいリアルでグロテスクだ。しかしリプリーにとって彼らは「もう1人の自分」であり、自分自身も彼らの仲間なのだ。そのクローンの1体がリプリーに哀願する「お願い...殺して」。


泣きながら「自分自身」を火炎放射器で殺すリプリーフランケンシュタインのように科学者のエゴで生み出された者たちの怒りと悲しみがうずまくこのシーンはとても辛い。


映画後半、リプリーの体から取り出されたクイーン・エイリアンから生まれたニュー・ボーン・エイリアン(以下、NB)が登場する。リプリークローン同様に人間とエイリアンが組合わさったNBはなぜか「産みの親」であるクイーンを殺し、自身の中にある人間の遺伝子ゆえかリプリーを「母」と認識する(ただし他の人間は敵)。


おかーさーん


エイリアン2完全版では、実はリプリーには娘がいたが(「1」の後に57年漂流していたので)既に亡くなっていることが判明する。だからこそ「2」に登場するニュートを自身の娘と重ね合わせ命がけで彼女を救うが、「3」の冒頭でニュートはあっけなく死んでしまう。リプリーはこれで2人の娘を失ったことになる。


そんな状況下で、自分を「母」と慕う「3人目の子供」NBが現れたのだ。NBは人間ではない。しかし今や自分自身だって人間とはいえないのだ。何度も自身を裏切り続けた人類を見限って、この新しい「子供」と共に生きるという選択肢だって間違いなくあったハズだ。


しかし、黒い瞳をウルウルさせて甘えてくるNBを断腸の思いでリプリーは殺す(それもこれ以上はないという残忍な方法で)。NBの断末魔は私にはこう聞こえる。


「どうして?なぜ?ボクを殺すの?お母さん!!」



リプリーが泣きながら「許して...」とつぶやくこのシーンで私は毎回感極まって号泣してしまう。「モンスターへの愛」に溢れた作品として超オススメ。


エイリアン4 完全版 (2枚組 プレミアム) [DVD]

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