カフェ・オパールのBABAさん
ネットで色んな人の映画評を読むのが好きだ。ノー・チェックだった作品のレビューを読んで気になって観に行く事は珍しくないし、自分が既に観てあまり気に入らなかった作品が別の方のレビューを読む事で「こんな見方もあったか!」と驚くことも日常茶飯事。
最近では自分にとって「信頼できるレビュアー」も分かってきたけど、4-5年くらい前はまだ手探り状態だった。その当時、すごく好きだったレビュアーがこの「BABAさん」。京都のカフェ・オパールのサイト内の「reviews」というコンテンツで、BABAさんを含めた数人の映画レビューが載っていた(実際には9割以上BABAさんが書いていた)。
年に300本前後の映画を観る(らしい)彼のレビューは、とにかく読みやすかった。相当の知識をお持ちのはずなのに、それをひけらかす事なく誰でも楽しめる文体にしながらするどい批評もあったりで、読んでいて「そーかー!」とひざを叩くこともしばしば。
そんなBABAさんのレビューが、2007年3月で止まった(一応、2008年1月に2007年のベスト10は出してる)。それまでも更新が空いたことはあったのであまり気にしていなかったが、最近になって2008年7月に亡くなられていたことが判明。
2008年7月23日、当オパールのサイト管理人でもあり、京都では知る人ぞ知る有名人であったババさんが、永眠されました。享年45歳でした。
神聖なる喜劇、なのか | 元店主の日記 | 京都カフェ・オパール Cafe Opal
お会いしたこともないし、カフェに行ったこともないけど、楽しいレビューを読ませていただいたこともあったので、追悼の意味を込めてこの場を借りてBABAさんのレビューをいくつか紹介したい(とはいえ、たくさんあるので全部は読めてませんが...)。
宣伝見るに一見、愉快なペンギンさんたち踊り唄うハッピー満点ファミリー・ムーヴィー、しかしこれ実は、「本当は恐ろしい『ハッピー・フィート』」と申しますか、かつてこんなに残酷な映画があっただろうか? いや無い。いやある。『未来世紀ブラジル』や『トータル・リコール』に匹敵、もの凄い後味の悪さを残す、底意地悪い映画なのであった。
「ハッピー・フィート」 | レビュー | 京都カフェ・オパール Cafe Opal
↑これが事実上、(オパールでの)最後のレビューでした。面白くて何度も何度も読み返した。
『マルホランド・ドライブ』のパンフを読んでおりますとね、リンチが敬愛してやまないフランシス・ベーコンの言葉「私の作品に意味はない。私は私の見たいものを描いているだけだ」が紹介されてまして、これは『マルホランド・ドライブ』にもピタリと当てはまるんちゃう?
: Cafe OPAL レビュー
この映画のハッピーエンドは、さながら『トータル・リコール』、または『スターシップ・トルーパーズ』(ともにポール・ヴァーホーヴェン監督作品)のようで、永遠に夢を見続けることの恐ろしさを私は見て取って慄然としたのでした。このラストは恐いですね。ホントに。
アメリ: Cafe OPAL レビュー
『ゴダールの映画史』という映画(ヴィデオ?)がありましたが、日本・香港映画からの引用に溢れた『キル・ビル Vo.l 1』は、「タランティーノの映画史 1-A 日本・香港編」と呼ぶべき作品、メキシコでロケされたらしい『Vol. 2』は「映画史 1-B マカロニ・ウェスタン編」なのかも?
キル・ビル Vol. 1 レビュー Vol. 2: Cafe OPAL レビュー
他にもたくさんあるので気になった人はチェックしてみて下さい。ちなみに私が映画の感想とか書く時にラストに「オススメ」といれるのはBABAさんの影響です。
昨年は洋画の当たり年と言われましたが、BABAさんによる「ダークナイト」や「WALL・E」評が読みたかったなー(新たなレビュアーのMatsuyamaさんの「WALL・E」評も面白かったけどね)。それにしても京都ってグルーヴィジョンズのミルクマン斉藤さんとかFPM田中さんとかマニアックで奥深い方が多いですよね。
カフェ・オパールは現在移転に伴い閉店している模様。2/1には祇園に再オープンされるそうなので、京都に行く機会があれば(なかなかないけど)お邪魔してみたいと思います。
改めて、BABAさんのご冥福をお祈りします。
(参考)
京都カフェ・オパール