お母さん いい加減あなたの顔は忘れてしまいました-「デトロイト・メタル・シティ」
純朴な青年、根岸崇一(松山ケンイチ)は、ポップミュージシャンを目指して大分県から上京する。だがひょんなことから人気悪魔系デスメタルバンド“デトロイト・メタル・シティ”のギター&ボーカルとして活動することになる。彼らのデビューシングルは大ヒットを記録し、崇一は自分の意思とは関係なくカリスマ悪魔歌手に祭り上げられていく。
109シネマズMM横浜で見ました。
原作マンガは好きなんだけど、正直言って映画として観るのは辛かった。後半連打される「no music, no dream」なるテーマというかスローガンがこっ恥ずかしくて直視できなかったのが要因。クライマックスであるジャックとの対決(?)シーンもなぜあそこで「あの曲」を演るのかよく分からなかったし。
では嫌いかと言うとそんな事なくて、「根岸が田舎に帰る」シークエンスがとても好きだった。大いに笑って大いに泣かされた。
(以下、若干ネタバレ含む)
とある理由で実家でクラウザーを演じることになる根岸(なぜクラウザーの衣装を持ってるのかは謎だけど)。それを見た宮崎美子演じる母は「今日泊まっていけ」と言う(母がクラウザーのことを「クラちゃん」と呼んで、家族で食卓を囲むシーンがシュールで面白過ぎた)。当の根岸は「バレていない」と思っていたが母は全部お見通し(ここは原作と異なってる)。その上で何も聞かずに根岸に(間接的ではあるけど)「息子の夢が叶うのが私の夢」と言う。ここで私の涙腺崩壊。
何度も引用するが、ここでも「ソウル・フラワー・トレイン」のお父さんの「頑張れ」を思い出した。「なぜ」とか「どうして」とか聞きたいことは山ほどあるけど、何も聞かずに我が子を全肯定する姿に強く惹かれた。
もう1つ思い出したのがザ・スターリンの遠藤ミチロウ。自分は中高生の時に数々の伝説を聞いてミチロウの事が本当に怖かったのだ。
ライブ会場では豚の頭や臓物を客席に投げつけ、爆竹や花火を投げ込み、全裸でステージから放尿し、客にフェラチオをさせるといった過激行為で悪名を轟かせる。東京のライブハウス「屋根裏」を破壊し、出入り禁止になったことがある。また文化祭ライブで全裸になり、逮捕された事もある。
ザ・スターリン - Wikipedia
ミチロウの「お母さん いい加減あなたの顔は忘れてしまいました」を聴いて「ミチロウのお母さんはこの曲聴いたのかなぁ?」とずっと考えていた(実際には特に母を侮辱する歌ではないけどさ)。もしかしたらにっこり笑って「頑張れ」と思っていたのかもしれない。そうだったらいいなぁと思った。
そんなわけで私的にはベスト・アクトは松山ケンイチでも加藤ローサでも松雪泰子でもなく宮崎美子だったりします。ああいう人に私はなりたい。
その他
・カメオ(というか堂々と)出演していたカジヒデキの「甘い恋人」は皮肉でもなんでもなく名曲だと思う。
・原作で妹の結婚式にクラウザーが出席した時もマジ泣きした(家族ネタに弱いんだよ)。
・今年のカワサキハロウィンは娘に「クラウザーたん」をやって欲しかったのに「イヤ」と言われました。
(参考)
メタ・カジヒデキを自己再現するカジくんは、ベタなのかメタなのか-日々常套句
「デトロイト・メタル・シティ」をかなりマジメに観たっす。-ACID TANK
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