山あり、オチなし、意味あり?-「ハプニング」

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ある日突然、アメリカ全土からミツバチが消えるという異常現象を皮切りに、世界中の人々が突然死に至る病がまん延し始める。人類滅亡の危機を前に世界はパニックに陥っていた。その地球危機の中で主人公(マーク・ウォールバーグ)は家族を守るために安全な土地を目指し、迫りくる何かに追い込まれながらも、希望を捨てずに原因究明と家族のために逃避行を続けるが……。


過去のシャマラン作品は苦手だった。好きとか嫌いというよりも「水が合わない」という感じ。思わせぶりな演出は「思わせぶり」でしかなく、「だから何なんだよ〜」と言いたくなってしまう。そんななかで見つけた「ハプニング」のR指定版トレーラー。


「ミスト」を観て興奮していた時期で、こちらも「ある日急に終末が始まった」という大好きなパターン。それでいてハードコアでリアルな死の描写。これはいけるかもしれない!


そう思っていたら、先に公開が始まったUSでの評判が伝わってきた。「金返せ!」と叫んだ人がいたとか、いなかったとか...。「やっぱり、ダメなのか?」と思ったものの、最初の直感を信じつつ観に行ったら...。


超面白かった!!!
(以下、ネタバレ含む)



まずは「自分からライオンに喰われ」たり、「でかい芝刈り機の下敷き」になったりの自殺のバリエーションの多種多様さと、その異様さに圧倒された。多くのシーンは長回しだったり、ちょっと引いたりして「本当にその場で起きてる」ように見せていた(「キュアー」の交番シーンとか思い出した)が、これがイヤになる程うまい。また、工事現場で次々と人が飛び降りてくるのはイヤでも911を思い出させた(TVを通して聞いた「人が地面に叩きつけられる音」が未だに耳にこびりついて離れないのだ)。映画開始数分で一気にシャマラン・ワールド。つかみはOK。


そして主人公が授業するシーンで早くもこの映画の「オチ」が語られる。曰く「植物のことはよく分からない」。見方によっては「理路整然としたオチは今回つきませんよ」と宣言したようなこのシーンを過ぎると、あとは整合性とかあんま考えずに突っ走るだけ。原因不明の見えない脅威からただひらすら逃げるのみ。Go Go West!西へ向かうぞニンニキニキニキニンニンニン。


ただし前評判にもあったけど、ドラマ部分が弱過ぎる。「ミスト」においては主人公が「自分はダメでも5歳の息子だけは助けたい」という「生き抜こうとする明確な理由」があったので映画の世界に引き込まれたが、「ハプニング」においてはソレは希薄。ぎくしゃくしていた夫婦仲が次第に回復していく展開なんかマジどーてもいい話だし、主人公の友人においては「妻」と「娘」を天秤にかけて「妻」を助けに行っちゃう。親としてありえねーよ。返す返すもそれが残念で仕方がない。


しかし、それらを差し引いても面白かったのは、これまで水が合わなかった「思わせぶりな演出」がズバリだったから。オチを曖昧にしたことで「(意味分からないけど)何となく不気味だったシーン」は「(やっぱり意味は分からないけど)とても不気味なシーン」になった。「いきなり散弾銃で吹っ飛ばされるガキ」や「人形と寝るキチガイおばさん」なんかも、ストーリーに直接結びつかないけど、映画の面白さに対して十分貢献していた。多くの人が持つ「シャマランだからどんでん返しのオチがきっとある」という期待や確信のようなのが個人的にはなかったことも、良かったのかもしれない。


「オチはない」と書いたけど、最後の「28週後」ライクなラストは気に入った。紛れもない「シャマラン映画」だけど、あまりソレを意識せずに観た方がいい、という不思議な条件付きでオススメ。


その他
・「自殺」はするけど「他殺」はしないんだよね。不思議。
・うっかりiPhoneが欲しくなった。あの「ライオン動画」をYouTubeに流して宣伝にすればいいのに。


(参考)
Same Shit Different Day-『ハプニング』名・珍プレー集、その1