「WALL・E」を観る前に観るべき映画その4-「IDIOCRACY」


Idiocracy (2006)
Starring: Luke Wilson, Maya Rudolph Director: Mike Judge


今回は日本未発売のコメディ映画「IDIOCRACY」。

ストーリー要約。

極めて平凡な男ジョーと、売春婦リタは軍の実験でタイムカプセルに入って冷凍保存されられることに。しかし手違いがありそのまま放置され続け、目覚めた時には500年が経過していた。その世界には...


続いて「WALL・E」のストーリー。

29世紀、人類はゴミだらけになった地球を捨て、宇宙に逃れた...。残されたのは、ただひとりーゴミ処理ロボットのWALL・E。彼は700年という、気の遠くなるような孤独の中でコツコツと働き続けた。いつか誰かと、出会えることを信じて...。


つまり「WALL・E」の世界では、人類は22世紀の時点でゴミだらけの地球を捨てたことになる。

もしも、この時点で地球を離れてなかったら?

もしも、WALL・Eのようなゴミ処理ロボットもいなかったら?

もしも、そのまま26世紀になっていたなら?

その答えは「IDIOCRACY」の中にある。

(以下、ネタバレ含む)


親切な人が作った「日本語字幕付き」の「非公式予告編」。


ジョーが500年後の世界で目覚めたとき、周りはゴミだらけだった。ゴミで作られた巨大な山が崩れて「ゴミの雪崩」が起きても誰も気にしない。


人はフカフカのソファに座って巨大なモニタでテレビを見続け、座ったままでジャンクフードを食べて排泄まで行えるようになっていた(ちょっとだけ「いいなぁコレ」と思ったのは内緒だ)。


未来では皆が「バカ」になったことで、平凡な男だったジョーはこの世界で最も「頭がいい男」になり、大統領(もちろんバカ)から深刻になった「食料危機問題」を解決するように指示されることになる。


TBSラジオ「ストリーム」で町山さんが語ったところによると、「WALL・E」に登場する29世紀の世界では人間は堕落しきっており、人は自分専用のインターネット画面をずっと見続けているだけで、運動もしなければ他人と会話することもなく隣に誰がいるかも分からない状態らしい。「誰かと手をつなぐ」ことだけを夢見て働き続けたWALL・Eとはえらい違いだ。

↓メタボの成れの果て。


この部分は驚く程「IDIOCRACY」と似ている。

WALL・Eもジョーも堕落した未来世界に突然現れた過去世界からの訪問者だ(救世主か悪魔かは分からないけど)。


WALL・E」は今時珍しいくらい「メッセージ性が強い娯楽映画」だ。

このままゴミが増えたらどうなるの?

インターネットばっかり見ていて、個人が他人や世界と向き合わなかったらどうなるの?

町山さんによると「WALL・E」はこういったメッセージ性の強さから「アカデミー作品賞」(アニメ部門ではなく)を取る可能性すらあるらしい。


それはそれでいい話だけど、ほぼ同じメッセージ性を持った「IDIOCRACY」が無視されてるのはどういうことだ?USでは一応劇場公開されたもののヒットには結びつかず、日本ではDVDすら発売されていない。コメディじゃダメなのか?下品なネタのオンパレードじゃダメか?(ダメかもしれない)。


「『WALL・E』よりも早く、地球の未来に警告を発したエコなコメディ映画」とか適当なキャッチつけて日本盤DVD出してくれませんかねー?


追記(20081110)
日本版DVDが「26世紀青年」のタイトルで発売決定しました。


(参考)
「IDIOCRACY(US盤)」-THE KAWASAKI CHAINSAW MASSACRE

「Idiocacy(2006)」-Die-Early

ピクサーの新作『WALL-E』が今年のオスカー最有力候補の理由-ベイエリア在住町山智浩アメリカ日記

「WALL・E」を観る前に観るべき映画その1-「ハロー・ドーリー」
「WALL・E」を観る前に観るべき映画その2-「サイレント・ランニング」
「WALL・E」を観る前に観るべき映画その3-「街の灯」