JUNO/ジュノ


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パンクとホラーが好きなクールな女子高生ジュノ(エレン・ペイジ)は、親友ブリーカー(マイケル・セラ)との興味本位にセックスをして妊娠してしまう。中絶を思いとどまったジュノは友だちのリア(オリヴィア・サールビー)に協力してもらい、養子を希望している夫婦を探すことに。理想的な夫婦を見つけ、会いに行ったジュノだったが……。


「英語が分からない人は映画評論家を名乗る資格がない」

と言ったのはウチの嫁さんです。その意図は「日本語字幕は実際のセリフとかけ離れていて情報も足りないしニュアンスが異なることも多い。そんな字幕を見ての評論にはあまり意味がない」との事。

この言葉の是非は改めてどこかで語るとして、とにかく日本語字幕は実際とかなり違う、というのが今回のポイント。


で、「ジュノ」。昨日も書いたけど、ずっとR-15とかPG-12の映画ばかり見てたので「魅力的な女の子が主役の青春映画」でも見ようと思って渋谷アミューズCQNへ(私は未だに「CQN」を何と読むのか知らない)。同じ「妊婦の話」でも「屋敷女」とはえらい違いだな。

女の子はかわいいし、セリフの1つ1つが輝いてるし、音楽もいいしで非常に面白かった。お父さんをはじめとした家族の対応にも感動した。ただ、何となく「この映画のキモ」に触れていないような気がする。表面だけしか見えてない気がする。


そんな状態でこちらを読む。

とくにジュノの父親が「お前のすべてを認めてくれる相手を見つけろ」と話すシーンはすばらしく、「いいか、お前のケツの穴まで太陽の光で照らしだしてくれるようないい男がいるんだぞ」と説得する場面*1はちょっと涙がでた。
(中略)
字幕では、文字数の都合もあってか省略されてしまっていました。もったいない! すごくいいせりふなのに。ぜひ聴き取りしてみてください。

2008-06-16 - 空中キャンプ


!!!

あのシーンは確かに良かった。一応「娘を持つ父親」なもんで(字幕のままでも)ジーンときたしちょっと泣いた。でもこの「真のセリフ」(という言い方が妥当か分からないけど)の心に響き方は字幕とは比べ物にならない。


音楽に関してはこういうのもあった。

この映画で起用されている音楽で、まず最初におっ!と思ったのはKINKS“WELL RESPECTED MAN"。KINKSのその後の市井ソング路線を決定付けた名曲で、周囲から尊敬されている人物の小市民的性質を皮肉っぽく歌っている曲なんだけど、これがジュノのセックスのお相手ブリーカーが初めて登場するシーンで流れ、ジュノのこの男に対する意識がくっきり浮かび上がるナイスなセレクト。この斜に構えた視線の提示は、後半になって生きてくる。


 他はアコースティックな曲が多し。BELLE & SEBASTIANの駆け落ちソング“PIAZZA,NEW YORK CATCHER”が、お腹の大きくなったジュノが同級生たちにジロジロ見られるシーンで流れたと思ったら、ジュノがブリーカーとケンカしてベイトマンの家に駆け込むシーンのブリッジとして、追い打ちをかけるようにベルセバの“EXPECTATIONS”が。ティーンの周囲との違和感を歌ったこの曲はハマリ過ぎだ。

甦るルーザー思春期 - 映画×ロケンロー備忘録


多分この映画にはこういう「キモ」の部分がたくさんある。セリフの1つ1つ、流れる音楽の歌詞やその背景、ファッションや小道具まで何かしらの意味が隠れている。かといってそれらが全て分からなくてもいい映画ではあるけど、分かればもっともっと面白く感じるはず。

これらは「英語を理解する」だけで得られるものではないけど、毎回言ってるけど英語勉強しなきゃだなー。永ちゃんも言ってるように「もったいない」からね。


その他
里親先の夫婦の旦那が自分と年齢も近くて、ジュノに「ソニック・ユースによるカーペンターズのカバー」を聴かせたり、H・G・ルイスのビデオを見せて(つか、妊婦にこんなの見せんなよ)、しかも受けちゃうところなんかは「分かるなー」と思ってニヤニヤしながら見てたら、後半の態度にずっこけた。

エレン・ペイジはどんなに生意気な態度とっても愛されるキャラを見事に演じてた。「ハード・キャンディ」でも抜群の存在感だったけど、一気にブレイクした感じ。「ジュノに憧れて妊娠する女子高生」とか出てきても驚かない。

彼氏のブリーカーってデビュー時のベックっぽいよね。こういう顔がモテるんだよ(ひがみ)。

映画館は女の子ばっかりだったけど、男泣きできるのでおっさんにもオススメ。


(参考)
Same Shit Different Day-『JUNO』にやられた理由

S-killz to pay the \.-ツワリ・ティーンエイジ・ライオット〜ジュノ〜