子どもに見せたい映画百選その6-「バカ映画、だけじゃない」サボテン・ブラザース

時は1916年、メキシコ。盗賊の暴挙に苦しむ小さな村サント・ポコに住む女性カルメンは、西部劇のスター“スリー・アミーゴ”(スティーブ・マーティンチェビー・チェイスマーティン・ショート)を本物のガンマンと思い込み、盗賊退治を依頼。出演作の大コケでスタジオを解雇されたばかりの“スリー・アミーゴ”の面々は、それをショーのオファーと勘違いして、メキシコに出向くのだが…!?


スターチャンネルHVで見ました。もう何回見たか分からない。「バグズ・ライフ」も「ギャラクシー・クエスト」もストーリーの骨格は同じでどう転んでも面白い黄金パターン。字幕で見たのでストーリーがあまり理解できていないはずのまりんも腹を抱えて笑ってました(彼女は本当に腹を抱えて笑う)。

サボテン・ブラザース」はみうらじゅんが「キングオブバカ映画」と評したことから「ギャグ満載の笑うだけの映画」と思われてるかもしれません。もちろんその通りだしそれでも全然問題ないんですが、あえてちょっと深読みした方のエントリが見つかったので紹介。

 『サボテン・ブラザーズ』にしても『ギャラクシー・クエスト』にしても、B級はB級なのですが、例によって僕は深読みをして、どちらからもA級のメッセージを受け取っています。そのメッセージとは「人は役によって決まる」ということです。

 「なんだ、前回と同じじゃないか」と思われるかもしれませんが、違うのは、その役を他人が決めるのではなく、自分が決めるのだという点です。前回述べたようにキャラは相対的に決まるものですが、自分で決められる部分も必ずある、もっと主体的に生きよう、主人公になろう、というのが今回の主張です。力説したいことです。自分が強く信じれば、その通りに物事が運ぶというドリームズ・カム・トゥルー状態を、心理学では「ピグマリオン効果」と呼びます。ピグマリオンとはギリシャ神話に登場するキプロス王の名前です。彫刻の名手であった彼は、自分が彫った美少女に恋をしてしまいます。来る日も来る日も想い続け、動かない象牙の像に食事や衣服まで与えます。やがてその彫像には血が通い、本当の少女となって歩き出す。2人は結ばれ、子供までもうけたというお話です。強く思えば不可能も可能になる。愛の女神アフロディーテが彼を哀れに思って奇跡を起こしたのです。

海底800mメートル


ピグマリオン効果-wiki


スリー・アミーゴの3人は一度は村を去りますが、村人の「期待」に応え「本当のヒーローになる」為に悪党との戦いを「自ら」決心します。wikiによるとピグマリオン効果そのものには批判も多く実証されてはいないそうですが、映画を見る限りには非常に説得力を感じます(もちろん「期待」には限度がありますが...)。


他にも「サボテン・ブラザース」に関して面白いエピソードがあります。
まずは一見して何の関係もなさそうなこちらのPVをご覧下さい。
Incubus「Megalomaniac」You Tube
(埋め込みできなかった)


インキュバスが2004年に発表した曲で、Floria Sigismondi姐さんの手によるラジカルなPVが「ブッシュ大統領イラク戦争を批判した曲」として注目されました。
しかしこの曲にまつわるインタビューでボーカルのBoydは意外な発言をします。

Because of the track's political video (see "Doves Devour A War Hawk In Incubus' First Crow Video"), legions of listeners have assumed the song is about George W. Bush, but the inspiration actually came from a much different source.

"Have you ever seen the movie 'Three Amigos'?" Boyd asked. "Do you remember El Guapo? He was the bad guy. I think it was Steve Martin at the end who was talking about El Guapo and how everyone has their own El Guapo. It might be your mom, your dad or a tyrant of some kind. And basically I'm using my personal El Guapo."


超訳
この曲の政治的なビデオによりリスナーの多くはこの曲がブッシュ大統領についてであろうと推測したが、この曲のインスピレーションは正確には複数の異なったモデルから引き起こされた。

「映画 'サボテン・ブラザース' を見たかい?」とBoydは問いかける。「El Guapoを覚えている? 彼は悪人だった。確かSteve Martinが最後にEl Guapoについて、誰にとっても(心の中に)El Guapoがいると語っていたんだ。それは両親やある種の暴君だと。つまり基本的に僕は自分の個人的なEl Guapoについて語ったんだ」

Think You Know Who Incubus’ ‘Megalomaniac’ Is About? Think Again - MTV


サボテン・ブラザース」では、対決すべき「悪」は自分自身の心に潜んでいるのだと訴えます。それは「劣等感」や「コンプレックス」「恐怖心」かもしれないし、場合によっては「悪」そのものかもしれない。他人の悪を糾弾することと、自分の中の悪を見つめ直すことと、どちらが大事でしょうか?これもこの映画が抱えた非常に重要なテーマといえます。


繰り返しますが、そういう深淵なテーマがあろうがなかろうが単純に笑って楽しむだけで全然OKな映画です。今度はDVDで日本語吹き替え版を見よう。イーハー!



(参考)
Floria Sigismondi オフィシャルサイト(こちらでもPV視聴可能)

子どもに見せたい映画百選
1.シザーハンズ
2.アイアン・ジャイアント
3.ショート・サーキット
4.ジャイアント・ピーチ
5.インディ・ジョーンズ-失われたアーク
6.サボテン・ブラザース