悪魔のいけにえドキュメンタリーパック

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ホラー映画史上に深い傷跡を残した金字塔『悪魔のいけにえ』。世界を震撼させた狂気の世界はいかにして創造されたのか・・・?多角的なインタビューで浮き彫りにされる数々の製作秘話。ファン待望のドキュメンタリー2作品がセットでリリース!!

今更ながら購入。このDVDが発売された2005年は「悪魔のいけにえ」本編は日本では権利関係が複雑で「発売がほぼ絶望視」されていた頃なので、「本編を含まず2本のドキュメンタリー映画を2枚組DVDボックスにまとめる」というあまり例のない仕様で発売されました。それだけ「悪魔のいけにえ」の人気が高かったということですね(その後2007年にめでたく本編は発売されました)。

そういう経緯なのでドキュメンタリーのみとはいえ、日本盤限定特典として高橋洋柳下毅一郎黒沢清(!)、篠崎誠の音声コメンタリーがついたり、清水崇他のインタビュー映像があったり、青山真治阿部和重中原昌也の鼎談を含む32ページ豪華ブックレットが付属したり、デザインは(「本編」と同じく)ヨシキ所長だったり、というまさしく「決定版」と呼ぶにふさわしいモノでした(ただし「本編」は含まないんだけどね...)。

最初に殺人鬼一家を演じたキャストのインタビューで構成された「ファミリー・ポートレイト」を見ました。レザーフェイスを演じたガンナー・ハンセン(知的なインテリ風)が「私生活でも殺人鬼のように見られてしまう」苦労を語っていて泣けます。でもトビー・フーパーを含めた映画に関わった大勢の人達へのインタビューで構成された「ショッキング・トゥルース」の方が諸々面白く見れました。話題の中心は「晩餐シーン」での過酷な撮影秘話。

35-40度になる夏のテキサスで、カーテン閉め切った部屋の中は小道具として置いた動物の死体や食べ物が次々と腐りだし、キャストの衣装からは異臭がし(替えの衣装がないので何日も同じ衣装を着続けていた)、腐らないようにと用意した防腐剤の注射をスタッフが誤って自分自身に刺してしまったり(!)、そんなこんなの状況下で「ぶっ殺せ!」「やっちまえ!」「ぎゃああああ!!!!」といった撮影を26時間ぶっ通しで行ったそうです(柳下さんによるとハッパもやっていたらしい)。

それでも撮影は終わらず、後日「追加撮影」したのが最後にマリリン・バーンズがトラックの荷台で血だらけで狂ったように笑い続けるシーン。「今度こそやっと終われる!」という思いが爆発しているのがよく分かります。

非科学的ですが、そういう状況で撮影されたフィルムにはやはり特別な何かが刻まれているようにしか思えない。「エクソシスト」での悪魔払いのシーンで神父達の吐く息が白いのは、「本当に部屋に冷房をガンガン効かせたから」らしいけど、こちらも鬼気迫るものがありました。

そうして完成した映画は世界中で大ヒットするも、権利をマフィアに売却したことで、スタッフ、キャストともにほとんど利益はなかったそうです(後半はほとんどこのことに対する愚痴オンリー)。ひどい話だ。

他には、自身の映画のコメンタリーもやったことがない黒沢清がコメンタリーでホラー映画の演出についてあれこれ語っていたのが面白かったです。また「本編」見直したくなること間違いなしの面白さでした(無限ループ)。