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70年代にポスト・パンクの旗手として活動するも、23歳の若さで自らの命を絶ったジョイ・ディヴィジョンのヴォーカリストイアン・カーティスの生涯を描く衝撃のドラマ。U2ニルヴァーナのミュージック・ビデオを手がけてきたアントン・コービン監督が、苦しみの中でもがき続けたミュージシャンの実像を鋭い映像表現で見事に映画化している。

シネマライズで鑑賞。「24アワーズ・パーティー・ピープル」「シャドウプレイヤーズ」に続く(オレ的)「ファクトリー三部作」最終章。

ドキュメンタリーではないにしても、「実話を元にした映画」であれば、ファンが求めるのは「意外かつ驚愕の真実」なわけなんだけど(例「悪魔とダニエル・ジョンストン」)、蓋を開けてみたらあまりにも「ありがちな話」で逆に驚いた。

「急に成功した不安」「てんかんの発作とそれをおさえる薬」といった事情はともかく、「いい人だけど地味で地元志向の嫁さん&生まれたばかりの娘」と「美人でキャリア指向のフランス娘(本当はベルギーだけど、ここはあえてフランス)」との板挟み、ってどんだけ庶民的悩みなんだか。浮気がばれて家に帰りたくなくてパブでグダグダしているシーンなんて、新橋のサラリーマンかと思ったよ。見た事ないけど「NANA」とかの方がよっぽど複雑な話なんじゃないの?

アントン・コービンのモノクロ映像は写真家らしいフレームで最高にかっこいいんだけど、映像がかっこいい分お話のショボさが目立ってしょうがなかった。原作を書いたのが嫁さんってのも大きいんだろうけど。

本筋とは別に、昔っからこうだったんだなぁと思わせるバーニーやフッキーの言動がいちいち面白くて笑った。何んだよ「催眠術」って(笑)。考えてみれば、トニー・ウィルソンも死んじゃったし、マネージャーのロブも随分前に死んでるんだよね。「葬式は死んだ人のためではなく残された人のため」と言うけど、まさにそういう映画だったような。

そんな感じで原作本にはあまり興味がなかったんだけど、下記のレビューを読んでちょっと興味がでてきた。

ともあれ、この本で僕が一番興味深かったのはジョイ・ディヴィジョンのサウンドに関して、まさに目から鱗が落ちる描写が記されているところ。

[本書78pより]

一度、バーナードが休暇をとった時など、イアンは残りのメンバーに「バーナードはイマイチうまくないからリズム・ギターをもう一人入れてサウンドを厚くする必要がある」と言った。「バーナードがいない時にオーディションをしてやる」とさえ私には言っていた。そんな事態を知ったバーナードは怒り狂ってロブ・グレットンに「誰がそんなこと考えたんだ」と詰問した。それを聞いたイアンはびっくりして「オレはそんなこと言ってないぜ」と言った。

面白いのは、この出来事がきっかけになり、ピーター・フックのベースの音量をもっと上げることになり、そうすることによって彼らの音楽の優れた点をより強力に押し上げることにつながったことだ。これはのちに、ジョイ・ディヴィジョンのもっとも愛されるトレードマークの一つになるのであった。

つまり、すべてはバーニーのおかげだったのだ!

http://d.hatena.ne.jp/zenibuta/20060920#p1

爆笑!いいなぁ、バーニーって。死んだカリスマよりも残された凡人の方がオレは好きだよ。