細雪

細雪 [DVD]

細雪 [DVD]

市川崑監督が谷崎潤一郎の原作小説に挑み、そのリリシズムと美意識を艶やかに開花させた名作。昭和13年。戦争の足音が近づく大阪・船場の名家薪岡家の四姉妹は、三女雪子の縁談の話や四女妙子の奔放な言動など、何かと騒々しい日々を送っていた。そんな折り、長女鶴子の夫、辰雄が勤め先の銀行から東京転勤の辞令を受ける。春の1日、京の桜の下で遊んだ四姉妹に別れの日が近づく…。

秘宝でも市川崑監督の追悼特集が組まれてましたが、我が家では「細雪」をチョイス。理由は最近着物にどっぷりハマっている嫁さんが「着物が美しい映画といえばコレ」と推薦したから。

岸恵子佐久間良子吉永小百合古手川祐子という四大女優の共演が最大の売りですが、彼女達に負けない存在感なのが劇中何着も登場する着物。あから様に着物そのものを撮ったショットも多く、監督の着物にかける情熱を感じます。四姉妹の着物にはそれぞれ特長があって、例えば長女が着る羽織の裏地にはデカデカと家紋が入っていて、これが「本家のプライド」を背負っている長女のキャラクターを表現しています。

この時代(昭和13年)の着物を忠実に再現する為に、当時の資料や残された貴重な着物を参考にしてゼロから作り、一着一着染め上げたらしい。結果、衣装代のみで1億5000万(!)かけたそうだ(このあたりは特典映像の「市川崑監督きものを語る」で解説されています)。自分は詳しくないけど、嫁さんは着物が映る度に「は〜」と感嘆の声を上げてました。着物好きの間では「細雪ごっこ」という言葉もある位で「憧れの世界」らしい*1

もう1つ我が家にとってこの映画が面白い理由があって、それが映画の舞台となる船場や芦屋で話されている大阪弁の「船場言葉」。Wikiでは

船場言葉(せんばことば)は、大阪市船場を中心に大阪の商家で用いられてきた言葉。
(中略)
商いという職業柄丁寧な言葉遣いが求められたため、独自のまろやかな語感、表現が発達した。話し相手や状況によって語尾を截断したかのように省くものから複雑な変化をする。暖簾を守る船場商人に限っては、経営者一族と従業員の各自へ独特の呼称を固定して用いた。

大阪弁 - Wikipedia

と解説されていて、自分の印象では「本音を出さずに話す」雰囲気が「京都弁」に近いと感じたんだけど、嫁さんに言わせるとちょっと違うらしい。

嫁さんの両親は船場言葉を少し崩した感じで普段話すのである程度は馴染み深いんだけど分からない言葉も多くて、例えば四女の事を皆が「こいさん」と呼ぶ。これは姉妹の末っ子を意味する「小いとさん」がつまったもので、大体「可愛らしいお嬢ちゃん」といったニュアンスらしい。四女は三女を「きあんちゃん」(三女の名前「雪子」の「き」と姉(あん)ちゃんをつなげたモノ)、次女を「なかあんちゃん」(真ん中の「なか」)と呼んでいて、他にも女中の名前に「〜どん」をつけて「お春どん」と呼んだり、中年の男性の一人称が「ぼく」だったりして面白い(嫁さんのお父さんは確かに自分の事を「ぼく」と言う)。嫁さんの両親が遊びに来た時などに、家族間でちょっとした言い争いがあった場合、「ま〜ま〜お義父さん」とか言ってる自分が石坂浩二細雪で次女の婿養子を演じていて主にトラブルのまとめ役キャラ)に思えて仕方なかった。

細雪は舞台の方も有名で6月からは新キャストで上演されるらしい。

谷崎潤一郎の同名小説が原作の舞台「細雪」が新キャストで、来年6月に東京・丸の内の帝劇で上演されることになった。登場する4人姉妹は、長女・高橋惠子(52)、二女・賀来千香子(46)、三女・檀れい(36)、四女・中越典子(27)の豪華布陣。同舞台は、上演回数1100回を超す人気作品。来年が脚本の菊田一夫さん生誕100周年に当たることなどから、新たな顔ぶれとなった。

http://www.sponichi.co.jp/entertainment/news/2007/11/06/02.html

帝国劇場-細雪
当然豪華な着物も売りの1つなので、↑のサイトには「四姉妹着物解説」というコンテンツもあり。

映画では四姉妹が花見する優雅なシーンで始まるので、そろそろあちこちで「細雪ごっこ」やってるのかも。

その他個人的感想
・「犬神家の一族」を見たばっかりなので、「で、誰が死ぬの?」とか思った。石坂浩二もいたし。
・美しい映画なので、Blu-rayで見直したい。追悼ボックスとかで企画されてたらちょっとうれしい。

↓こういう本もあるのね。今度探しててみよう。

細雪のきもの

細雪のきもの

*1:ちなみに別の一派として「極道の妻たちごっこ」もあるようですが...